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(イチゴ)狩の時間ね・・・・・・ 『試練と果実』――少女軍人と静かな贈り物

休日の士官学校食堂。教官たちが談笑する中、ブロント少尉はパンと牛乳を片手に耳を傾けていた。 「この前のイチゴ狩り、ほんとに甘くて美味しかったですね~」 「ハウスの中も快適だったし、まさに春って感じで!」 ――イチゴ狩り……。 ブロント少尉は眉を寄せて考え込む。 (狩り、ってことは……イチゴ型のモンスターか。あるいは仮面ライダーで見たような果実を支配する女王型の敵!?) だが、女性教官たちは皆うっとりした笑顔で語っている。つまり―― 「なるほど。狩りという行為によってこそ、果実の本当の味わいが引き出されるのですね!」 と、例によって中途半端な理解で納得するブロント少尉。 そんな中、ふと気づく。 「……あれ、富士見軍曹、今朝はいないんですね」 話を聞けば、発熱で今日は病欠とのこと。あの鉄壁の軍曹が……珍しい。 鬼(オーガー)の攪乱か!? 日本のオーガって、意外に小柄なんですね。 などと失礼なことを考えつつ。 見舞いを思いついたブロント少尉は、軍曹の部屋をノックし、優しく尋ねる。 「軍曹、大丈夫ですか? 何か食べたいものとか……」 「……イチゴ……」と、熱に浮かされたようにぼそり。 その瞬間、少尉の目が輝いた。 「ピンときました!これは神が私に与えた新たな任務、“イチゴ狩り”の試練です!」 興奮気味にその場を後にしたブロント少尉は、士官学校の倉庫から登山用具をかき集め、おんぼろジープで出発。 目指すは山間の野イチゴ群生地。 ノウゴウイチゴ、可食、栽培難度高、つまりレア。 かくして、斜面をよじ登り、草をかき分け、谷に降下し、時に迷子になりかけながら、ブロント少尉は満身創痍になっても笑顔を失わなかった。 夕方、軍曹の部屋に泥だらけの少尉が現れる。 「軍曹ー! 狩ってきましたよ、イチゴ! ザル一杯です!」 すでに熱の下がった富士見軍曹は、呆れたような、でも少し微笑んでいるような表情でイチゴを受け取った。 「……ありがとう、少尉。でも、これ、食べられる種類で良かったですね」 「はい! 事前に『可食確認リスト』を10回チェックしましたから!」 軍曹は苦笑しつつ、イチゴをひとつ口に運ぶ。 「甘いですね……」 「でしょ! 試練の果実は、甘いんです!」 ふたりは並んで、山野の、人の味に舌鼓を打つ。 士官学校の休日は、今日も静かに、そして賑やかに更けていく――。

さかいきしお

コメント (5)

えどちん

少尉優しい

2025/05/13 20:41
謎ピカ
2025/05/13 19:42
Anera

イチゴとの死闘が感じられる汚れですね

2025/05/13 19:40
なおたそ
2025/05/13 18:13
gepaltz13
2025/05/13 17:21

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