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ブロント少尉とゴールデンウィークの断罪

士官学校・講堂にて。新緑がまぶしい春の陽気の中、教官たちが整列していた。 壇上の教頭が、いつも通り無感情な口調で訓示を述べる。 「そろそろゴールデンウィークだ。学生たちの中には、羽目を外す者も出るだろう。教官たちは、当直勤務中の見回りと監視を怠らないように」 「了解しました!」 教官たちの声が講堂に響く中、ブロント少尉は小さく首をかしげていた。 (ゴールデンウィーク……それは、何でしょうか? 金……金色……黄金? 黄金の何か?) 視線を宙にさまよわせながら、彼女の頭の中では、いつものように妄想がふくらみはじめる。 ――金閣寺がきらめき、黄金の金平糖が空から降り、大仏が光り輝き、巫女服の金剛さん(砲塔付き)が信者に手を振っている。 「つまり……金色の連休。金色の神仏。金満寺院による連続搾取の儀……?」 隣にいた富士見軍曹がぽつりと漏らす。 「連休中は神社やお寺も賑わうらしいですね。警察の方も大忙しだとか」 それを聞いたブロント少尉の目がギラリと輝く。 「やはりそうでしたか。神社仏閣が、連休を利用して金銀財宝を集めていると……。悪質な狐の巫女が巫女服で金貨の山に囲まれて高笑いし、信者に金色の供物を要求しているのですね!」 「いえ、してません」 「それは放置できません。宗教に仮託した資本主義の暴走……これは断罪されるべきです」 「少尉、それ全部妄想です。口に出てますけど、妄想ですよ」 ブロント少尉は本気の顔で軍曹を見つめる。 「連休とは、すなわち信仰と欲望が交錯する戦場なのです。わたしが乗り出すべき戦場です」 「違います。あなたは当直勤務の戦場で仕事してください」 「ですが、軍曹……この妄想があまりにも現実味にあふれていて……金ぴかの寺と、金ぴかの巫女と、金ぴかの菓子が……」 「妄想の段階で“現実味”という言葉は使わないでください」 軍曹は頭を押さえて深いため息をつく。 「少尉、ゴールデンウィークって、ただの“祝日がたくさん続く連休”って意味です。黄金とか、神仏とか関係ありません」 「えっ、そうなのですか……?」 「そうなんです。そもそも“ゴールデン”って、テレビ局が視聴率が良い時間に勝手につけた名前が広まっただけらしいですし」 「……では、ゴールデン=金髪=わたし……これは、つまり」 「ちがいます」 「わたしのためのウィーク……すなわち、ブロント・ウィーク!」 「ちがいますってば」 こうしてまた、ひとりの少尉が妄想の中で断罪の大義を掲げながら、軍曹に回収されていくのだった――。

さかいきしお

コメント (6)

Ken@Novel_ai
2025/04/30 21:14
かがみん

榛名かと思ったら金剛だったとわ

2025/04/30 20:51
えどちん
2025/04/30 19:58
なおたそ
2025/04/30 19:46
Crabkanicancer

少尉、そのお舟(艦)の娘さんはゴールドじゃなくてダイヤモンドや!

2025/04/30 17:42
みやび

大忙しですがわるいことはしてませんよ~!?

2025/04/30 16:56

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