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【呪い】ミリシラ様の異世界百景その21「ツラタンカーメン王墓」
地球の皆の者、こんクエスト~!全知全能の大賢者「ミリシラ・シッタカブール」様じゃぞ。今日は仕事のついでになるんじゃが、「ツラタンカーメン王墓」を紹介してやろう。 まず、ワシの持っているオーブが見えるかのぅ?このオーブ、実は非常に強力な呪いがかかっている「呪いのオーブ」でなぁ。長い間全く正体不明で国の研究機関に置かれていたものなんじゃが、つい先日ようやっとルーツが分かったんじゃ。どうやら「ツラタンカーメン王墓」の中にあったものを、誰かが持ち出して王都に運んだようでのぅ。恐らくは、昔の盗掘者じゃろうな。見た限りは美しいオーブにしか見えんから、金になると判断して盗んだんじゃろう。 このオーブの呪いそのものは別に特筆するようなものじゃなく、未練を残して死んだ者達の怨念が集まっていただけに過ぎんかった。じゃからまあ、魔力耐性が無い者や悪霊の影響を受けやすい者が持っていると体調や気分が悪化するが、ワシのように高い魔力の持ち主には何の影響も与えられんアイテムじゃな。しかしこういう物が本来の場所を離れているのもあまりよろしくない。実際、このオーブを研究していた研究者の中にも気が触れて自ら命を絶とうとしたものまで現れているのでな。迂闊に破壊すると宿っている怨念が周囲に撒き散らされてしまうかもしれんので、元の場所に戻しておくべきという結論に至った。 しかし「ツラタンカーメン王墓」は噂によるとアンデッド系魔物の巣窟になっており、加えて罠まであるそうじゃ。魔力耐性が高くてアンデッドに効果的な聖術が使えて罠を見抜ける才能を持った者ではないと危険、しかも「ツラタンカーメン王墓」は歴史的に価値のある遺跡という事で、内部での戦闘は遺跡を傷つけるからなるべく控えてほしいときた。とどめに報酬も安い。そこまで面倒な条件が重なると、普通の冒険者はそっぽを向いてしまってのぅ。そこでワシに依頼が来たんじゃ。そういう訳で、このオーブをこれから王墓の最深部まで安置しにいくぞ。ちなみに王墓はもう目と鼻の先に見えておる。ほれ、あの四角錐の遺跡がそうじゃ。早速入ってみるかのぅ。 ・・・成程、昔の遺骨などが残っておるな。盗掘者の者か、ツラタンカーメン王の供として生きたまま埋葬された臣下か・・・どちらにしても、この遺跡がアンデッドの巣窟なんて噂が立つのも頷ける不気味さじゃな。しかし、不気味な事は不気味なんじゃが、なんか魔物の気配が全くしないのぅ。普通の魔物もアンデッドも、住み着いていそうにないんじゃが?罠らしいものもちっとも見かけんし・・・単に王墓への侵入をためらわせるためのデマだったんかのぅ。まあ、それなりに下まで続いておるようじゃし、警戒しつつ奥まで行くことにするわい。 (十数分後) おお、ここが最深部の祭壇じゃな。この祭壇はツラタンカーメン王の棺の役割も兼ねているそうじゃから、ここにかの王が眠っておるんじゃろう。・・・おっ、オーブを置けそうな台があるわい。きっとオーブはここから持ち去られたんじゃな。では、戻してやるとしようか。 むっ!?な、何かが動き出した?急に王墓内に多数の気配が現れたぞ。何か分からんが、行きはよいよい帰りは怖いって奴か?ちょっと警戒を強めて帰るとするか・・・。って、壁が開いてミイラが出てきよった!?しかも動いておるじゃないか!一体なぜ・・・ハッ!?ま、まさかこの王墓、あのオーブが動力源になってミイラを動かしたり罠を作動させたりする仕組みなのか!あの祭壇にオーブが置いてある限り、そこから呪いの力が王墓内に供給されるとでも言うんか!?まずい、それなら長居は無用じゃ!逃げるが勝ちじゃわい! ・・・ああー、ミイラ共の数が多い!これ入り口付近まで出たらあの遺骨まで動いとるとか無いじゃろうな!?まとめて吹っ飛ばす訳にもいかんから走って逃げるしかないわい!そういう訳でちょっと地球人たちの相手をしている場合じゃなさそうじゃ!今日はここまで! 見てくれてありがとうなのじゃ、おつカブール~! ぴゃあああ!?バカモン、どこに手を突っ込んでおるんじゃ!?ミイラになった後まで破廉恥とは、お主ロクな来世にならんぞ~!