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カタツムリ

50

2025年06月05日 21時04分
使用モデル名:StableDiffusion
対象年齢:全年齢
スタイル:イラスト
デイリー入賞 12
ウィークリー入賞 12
参加お題:

雨が降り出したのは、ちょうどキャベツを収穫し終えたタイミングだった。 「これは困難。天候が制空権を掌握したと見える……!」 畑の片隅で、キャベツとともに小ぶりなズッキーニや春大根を手早く籠に詰めるブロント少尉は、合羽のフードをかぶるのももどかしく、ひとまずそれらを農具小屋へと運び込むと、深く頷いた。 「戦線は一時後退。ここを拠点として、降雨の鎮圧と、補給の再編を行うべき時……」 誰にともなく作戦を語ると、濡れた軍靴を小屋の入口で脱ぎ、板の間へごろりと寝転がる。 合羽の裾から見える体操服は、泥で汚れていた。 「一時間だけ……仮眠である……」 かすれた声でそう言い残すと、彼女は腕を枕にしてくうくうと眠り始めた。 外では雨粒が農具小屋の屋根を優しく叩き、ぽつ、ぽつぽつ、とリズムを刻んでいる。 その音に混じって、微かな――にゅるり、という気配。 小屋の片隅、収穫したばかりのキャベツの葉のあいだから、一匹のカタツムリが、殻を揺らしながら這い出していた。 それは時間をかけて、ゆっくりと板張りの床を移動し、無防備な少尉のほうへ…… そして、ついにその小さな軟体が、ブロント少尉の頬に――ぴとっ。 「……むっ……敵……スライム、斥候……か……?」 寝言のように、まぶたをぴくりと動かしながら、右手で謎の敬礼を行う少尉。 しかし目を開けることはなく、ぴとりと冷たいものを頬につけたまま、再び静かな寝息を立てはじめる。 …… 数分後、野良塾の見回りを終えた富士見軍曹が、小屋の戸を開けた。 「もしもし、少尉? 大丈夫ですかー、って……うわ、またですか……」 軍曹はしばし絶句し、それから苦笑する。 ブロント少尉は、片頬に堂々とカタツムリを乗せたまま熟睡中。 軍靴の片方は入口の雨だまりでひっくり返っており、なぜか中に収穫したレタスが一玉ぴっちり詰められていた。 「……もう何がどうなったらこうなるんですか……」 軍曹はそっとカタツムリを摘まみ、キャベツの葉へ戻してやると、肩をすくめてひとこと。 「……せめて、野菜だけは無事でありますように、っと」 外はまだ、静かに雨の音。 そして小屋の中では、ほっぺたにカタツムリの足の跡を残したまま、ブロント少尉がのんびりと昼寝を続けていた。

さかいきしお

コメント (17)

ガボドゲ
2025/06/07 05:36
みやび
2025/06/07 02:35
早渚 凪

人によってはホラー展開なんだろうな、これ

2025/06/06 15:22
九一
2025/06/06 14:44
謎ピカ
2025/06/06 13:11
五月雨
2025/06/06 12:56
うろんうろん -uron uron-
2025/06/06 12:14
Ken@Novel_ai
2025/06/06 06:05

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