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RAINBOW FEAST(虹の宴)

──雨が上がった空に、七色の虹がかかっていた。 白いサマードレスの裾を枝に絡めながら、わたし──帝国陸軍少尉ブロントは、山中の一本木の上にてカメラを構えている。 レンズの向こうには、帝国海兵隊の野営地。八俣海凪大尉を筆頭に、十数名の海兵隊員たちが、地面で静かに食事をとっていた。 彩り鮮やかなキャラ弁がひとり一つ。動物、アニメ、ゆるキャラ。内容は千差万別。全てが、我が陸軍の手による作戦物資である。 「──レインボーブラボー、レインボーブラボー。配置につきました。食事の開始を確認。作戦、続行します」 風に吹かれて、返事はない。 わたしはもう一度、通信機に向かって静かに声を落とす。 「レインボーブラボー、プリーズ・インカム」 ……無言。 「お~い、ふじ」 『レイボーブラボーなんていませんよ。いないのに返事できません』 「返事してるじゃないですか?」 『ブツ・・・・・・] 切れちゃった・・・・・・ 富士見軍曹は、ただ、キャラ弁を作るのを手伝っただけ(のつもり)らしい。 しかも仕上げのウインナー切る段階で「もう二度とやりません」と言っていた。 かわいかった。   📡《RAIN-COM》本部通信──(士官学校教頭) 「……エンジェル、食事風景の撮影は?」 「進行中です。八俣大尉は、コリラックマの頭から箸をつけました。中身は唐揚げです。味は……おそらく、おいしいでしょう」 「写真は撮れているか?」 「もちろんです。戦場に証拠は必要ですから。なお、わたしが単独で任務につくこと自体が重要な示威行動です。食料でなぐる。それが陸軍流です」 「ふむ」 「ですが、大尉は多分気づいてます。目が合ったと思います」 「気づかれても構わん。あくまで“事実は残っていない”のが我々《レインボー》の存在意義だ」   ──八俣大尉。黒き制服に、八本のインナーカラー。静かな目元は、レンズ越しにこちらを見ていた。 わたしが“レインボーエンジェル”であることなど、当然気づいているに違いない。 でも、誰も証明できない。なぜなら、証拠写真を撮っているのがわたしだから。 完璧だ。 わたしはサマードレスの裾を撫で、カメラのシャッターをもう一度切る。 「……ミッション、継続します。雨上がりの虹が素晴らしいですね」 📡「エンジェル、富士見軍曹の配置は?」 「本部です。弁当作成後、即座に逃げました。電話番はしてましたけど。 “責任を問うなら軍法会議へ”と言ってました。なかなかやりますね」 📡「記録せよ。非公式協力者:レインボーブラボー《該当者なし》、とのちに処理する」 「了解しました。虹に紛れて隠れるのが、わたしたちの戦い方です」   ──その夜、八俣大尉から陸軍司令部に苦情の連絡が入った。 内容は「弁当が意図的にかわいすぎて士気が乱れる」 「誰が作ったかは不明」とのこと。 だが、記録にはこうある。 本任務は存在しない レインボーエンジェルは未確認 弁当は各隊員が自費で調達したとされる ……完璧だ。

さかいきしお

コメント (13)

2025/06/04 08:18
2025/06/01 15:08
2025/05/31 13:33

大尉、わたくしの技を御貸し致しましょう!

2025/05/31 13:18
2025/05/31 12:33

こんなクール系美人の軍人さんがコリラックマ弁当を食べる。そのギャッぷに人気出そう

2025/05/31 08:37
2025/05/31 06:32
2025/05/31 01:23

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