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ホタル狩り作戦 ーー冷光の温もりーー

「相手は特殊な可視光線迷彩を駆使する。赤外線では補足できん。富士見軍曹、スターライトスコープの用意を」 「ありません。そもそも蛍に使いません」 「くっ、ならばこちらも生体センサーを用いるまで……」 ブロント少尉は黒詰襟の軍服にミニプリーツスカート、そしてなぜかヘルメットを装備。その網に適当に草を突っ込み、匍匐前進の姿勢で小川沿いの草むらを進んでいた。 「あっ、痒い。攻撃を受けたな。だが、蚊に刺されたほどでもないわ!! 」 ペシ!! 「あっ、痛、軍曹足叩かないで」 傍らで富士見軍曹が、迷彩服、自衛陸軍の作業服姿で、少尉の生足にくっついた蚊を叩きながら小さくため息をつく。 「……草で偽装したって、蛍には関係ないんですけどね」 ゲロ~ 「ぬわっ!! ぬめっとする!!」 ふいに、夜の静寂を破らず、ぽつりぽつりと宙に灯る金の光。川面にゆらぎ、風に揺れ、ほのかに光って──  「……いた。やはり、奴らはここに……!」 草むらに腹這いのまま、ブロント少尉は掌をそっと差し出す。すると、一対のホタルがふわりと指先にとまり、かすかに脈打つような冷光を放つ。  「……美しい。これが……“自然界の光学兵器”……!」 横では巨大なカエルがじっと座っており、少尉の頬のすぐ横でゲロリと一声。 少尉はビクリと肩を震わせるが、すぐに笑った。  「……ふふ、静かな勝利だな……」 その様子を見ながら、富士見軍曹は静かに目を細める。 「少尉……本当に、楽しそうですね」 その冷たい声には、ほんの少し、あたたかい灯りが宿っていた。

さかいきしお

コメント (19)

2025/06/09 03:11
2025/06/08 23:43
2025/06/08 15:18
2025/06/08 12:52

乙女な少尉もありですわ!

2025/06/08 09:28
2025/06/08 06:11
2025/06/08 04:26
2025/06/08 02:52

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