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秘密の公園デート
やわらかな日差しが降り注ぐ、公園の小高い丘の上。 木陰の下、敷物を広げて座った二人は、ほぼ同時に「いただきます」と手を合わせた。 「うわぁ……先生のお弁当、まるで雑誌の表紙みたいです」 華蓮の眼差しは、怜花のランチボックスに釘付けだった。 彩り鮮やかなピーマンとパプリカの肉巻き、星形に切られたにんじんのグラッセ。ふっくらした卵焼きに、ふわふわの梅おにぎり。 「えへへ、ちょっと頑張っちゃったの。こういうの、得意で……」 照れくさそうに笑う怜花に、華蓮は小さく「すごいです」と頷いてから、自分のランチに目を落とした。 ……おにぎり一個。 それも、具なし。 「……地味ですね、私の」 「いや、えっと、そういうシンプルなのも、潔くていいと思うよ? 素材の味っていうか……」 「今日、寝坊してしまい。朝、3分で握って詰めました」 「……逆にすごい」 思わず吹き出してしまった怜花に、華蓮がくすっと微笑んだ。 「先生、なんでも笑いますね」 「だって、華蓮さんが意外すぎて。もっと完璧な朝を送ってるのかと」 「よく言われます。でも、結構ぬけてます」 おにぎりをひとかじりしてから、華蓮は言った。 「でも先生、今日はこの公園で、一緒にランチしたくて。だから、遅れずちゃんと来られてよかったです」 言葉は淡々としていたけれど、その声には、どこか芯のようなあたたかさがあった。 怜花もまた、そっと頷く。 「私も、うれしいわ。誰かとこうしてお昼を食べるの、実は久しぶりで」 「じゃあ、今日は“ランチの再デビュー”ですね」 「そうだね。しかも、こんな素敵な生徒と」 冗談めかして言ったのに、華蓮はまっすぐ怜花を見つめて、ほんの少しだけ顔を赤くした。 「……そう言われると、ちょっと……、……照れます……」 風がやさしく吹いて、二人の髪を揺らした。 静かな午後、何も特別じゃないようで、どこか特別なランチタイム。 「次は、華蓮さんも頑張ってお弁当作ってみる?」 「はい。……中身の保証はできませんが」 「楽しみにしてるよ。どんなに地味でも、きっとおいしいから」 怜花の笑顔に、華蓮もそっと微笑み返した。