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秘密のガーデニング

昼休み、校舎裏の小さな花壇に、静かなスコップの音が響く。 紫峰怜花は、まだ慣れない手つきで苗を植えながら、小さく首を傾げた。 「……うーん、ちょっと斜めになっちゃったかも」 「大丈夫です。自然界に“まっすぐ”は、あまり存在しませんから」 声の主、狭霧華蓮は日傘をたたみながら、怜花の隣にしゃがみ込んだ。 そっと隣に並べられた苗は……見たことのない双葉。 「それ、何を植えたの?」 「秘密です」 「えっ、秘密?」 「わたしにも、まだよくわかっていないので」 怜花がきょとんとする。 「この前、家の棚の奥にあった袋に“ミックス”とだけ書いてあって……発芽したので、ひとまず試してみることにしました」 「えっ、ミックス? 食べられるやつ?」 「たぶん……野菜か果物だとは思うのですが、今はまだ……“葉”しかないので」 「ちょっとした実験ね」 「はい。観察日誌も、つけ始めました」 ふたりのあいだに、風が通る。 怜花は自分の植えたラベンダーの苗に目を落とす。柔らかい緑が陽を受け、少しだけ香る。 「このラベンダーが咲いたら、部屋に飾ろうかな」 「では、私の“未知の苗”が実ったら、交換しましょう」 「……実る前提なんだ?」 「夢と植物は、どちらも育てるものですから」 怜花はふっと笑った。 小さな花壇には、名も知れぬ芽と、ふたりだけの秘密がそっと育ち始めている。

コメント (3)

タカ
2025/05/15 22:11
もみ
2025/05/15 21:11
謎ピカ
2025/05/15 19:34

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