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消えた幽魅を追いかけて

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2025年03月15日 15時00分
使用モデル名:animagine-xl-3.0
対象年齢:全年齢
スタイル:イラスト
デイリー入賞 158

幽魅がいなくなってすぐ、江楠さんに連絡を入れました。忙しいオーラ出してましたが、幽魅が公園爆弾の時に紅と出会っていた事を伝えると、舌打ちと「遅かったか」の一言の後に「翌朝金剛院邸まで来たまえ」と言い、話をする時間を作ってくれました。 朝になって私と玄葉が金剛院邸を訪れると、江楠さんは数人のメイドさんたちの前で地図を広げて作戦会議中でした。近くにはノートPCがあり、そこからドスの効いた低い男性の声もするので、江楠組の人はリモートで参加してるようです。まあ、ヤクザがお屋敷に出入りしてたら外聞が悪いからな。少し待っていると会議が終わり、メイドさん達は部屋を出ていきました。 「やぁ早渚君。玄葉君。すまんねバタバタしていて。町にまだ残っている爆弾と工作員の片付けがあるものでねェ」 「江楠さん、私が幽魅から聞いた話をさせて下さい」 私は『幽魅がテロリンクの一員だった事』『紅について回り、紅の仕掛けた爆弾を都度邪魔していた事』『この町でのテロリンの作戦は失敗した事』など、幽魅から聞いた話を伝えます。私の言葉が足りない所は、玄葉が補足してくれました。私の話を聞き終えた江楠さんは、何度か手帳にメモを取り、思案しているようです。 「成程ねェ、公園と中学校の爆弾が人的被害を出さなかったのは幽魅君のおかげだったか。懸念とは逆の方向に動いてくれたようで何よりだ」 懸念・・・やっぱり、江楠さんは『幽魅が紅と出会う事でテロリンクだった事を思い出し、テロリンに加担する』事を心配してたんだな。 「江楠さん、以前いただいた幽魅に関する資料は嘘だったんですね。あれにはテロリンに関する事は何も書いてなかった」 「ああ、その通りだ。君にはテロリンに関わって欲しくなかったし、幽魅君が幽霊として存在していると聞いて尚更言えなくなった。忘れているならその方が良いと思ってねェ。何せ幽霊だ、私には認識できない存在が敵というのはぞっとしない。しかしまあ、思い出してもなおテロリンを否定してくれたのは僥倖だった。君たちが彼女と絆を結んでいてくれたおかげかねェ」 でも、幽魅は思い出した事で苦しんでいるのです。何とか彼女ともう一度話したい。 「江楠さん、幽魅の居場所は分かりませんか?」 「そりゃ無理な話だ。生きた人間ならともかく幽霊、それも君たち二人にしか認識できないんじゃ情報の入りようがないだろ。私に出来るのは生前の行動の追跡までだし、それは既に渡した資料に書いてあるのがほとんどだ。テロリンクとしての幽魅君の活動内容なら分かるかも知れないが、それだってテロリンを否定した幽魅君にとっては拠り所にはならないだろう」 唇を噛みます。確かに江楠さんの主張通り、幽魅を認識できるのは私と玄葉だけです。 「正解の分からない私が言ってもヒントにならんかも知れないがね、思いついた事はある。君たちの話を聞いている限り、幽魅君は“イメージ”の影響を強く受けているように思える。空を飛ぶなら翼を生やす必要があるようだし、外見や服装の変化もそうだ。学生時代の写真を見てその頃の姿に戻ったりしたんだろ。だとしたら、幽魅君の目的に合わせた場所に向かうはずだ」 「目的・・・」 幽魅は言っていた。「ここにいていいわけない」と。これはこの町を離れるつもりなのか、それとも成仏する気なのか。 「お兄、もし幽魅さんが成仏するつもりだったら・・・」 「お寺とか?」 「どうかねェ、彼女は特別に信心深いわけじゃないだろ。自分が消えたいと思ったなら、普通の人間と同じような『自殺の名所』とかも考えられるぞ」 それだと海とか崖、樹海?まずいな、なまじ空を飛べる分どこに行ったか全く絞れない。 「とりあえずだね、君たちにしか幽魅君は認識できない。君たちが足で探す他方法は無いだろう。幸いテロリンの工作員のほとんどは捕らえていて、情報も搾り取ってある。危険人物は紅くらいしか残ってない」 「情報って・・・素直に話しますかね、犯罪者が」 私が懐疑的な目をしていると、江楠さんはにやりと笑った。 「男の工作員は江楠組に、女の工作員はメイド隊に“尋問”させた。身体に何をされるのが一番喋る気になるかは、同性が良く知ってるだろうからねェ。ちなみに用意した道具は針、釘とハンマー、鋏、ペンチ、万力、ガスコンロとかだ。メイド部隊の要望でローション、ハケ、孫の手、エッグローター、ディルド、シリコン歯ブラシなんかも用意したがね」 ・・・違法な尋問に違いない。あ、でもちょっとメイド隊の尋問の方は見学したいかも。 「お兄、ピンクな想像してないで幽魅さん捜しに行かないと」 「してないよそんな想像!」 それからというもの、私と玄葉は手分けして幽魅の痕跡を捜しました。とは言っても足跡とかが残る訳ではないので、不思議な現象を見なかったかの聞き込みや幽魅本人が人ごみに紛れていないかなどのチェックになるのですが、当然たった二人でやっているものだから成果が出る訳もなく、夕方が迫ってきます。お寺も見たし、駅や踏切、高層ビルエリアのような自殺できそうな場所も見て回りましたが、幽魅が見つかる事はありませんでした。暗くなってしまうと普通に周りが見えづらく、また紅がまだ町にいるので危険すぎるという事で、私たちは一度自宅に戻ります。 「幽魅、もうこの町を出てしまったのかな・・・」 「次は幽魅さんの実家まで行ってみる?」 そんな事を玄葉と話し合っていると、突然私のスマホが鳴りました。瑞葵ちゃんです。 「もしもし、瑞葵ちゃん?」 「凪さん、今お電話大丈夫ですか?あの、さっきおねーちゃんのお見舞いに行ったんですけど、途中で不思議なものを見たんです」 「不思議なもの?」 「宙に浮いて移動する花束でした。最初は何だか分からなかったけど、もしかしてあれ幽魅さんじゃないのかなって思ったので。幽魅さんを捜しているんですよね?」 浮かぶ花束!それは確かに怪しい。私は玄葉と顔を見合わせました。 「瑞葵ちゃん、その花束どっちに行ったか見てた!?」 「多分ですけど、山に向かってました。T山の方向だと思います」 T山。それは幽魅のスニーカーが発見された場所だったはずです。そうか、もしかして自分が死んだ場所を目指しているのか。『自分を終わらせたい・消えたい』と思ったから、自分の人生が終わった場所で消えようとしてるのかも。 「ありがとう瑞葵ちゃん、早速行ってみる」 「ふふ、頑張って下さいね」 瑞葵ちゃんとの通話を切り、私は出発の準備を整えます。 「お兄、私も行く」 「いや、玄葉はここにいて。紅が動き出すかも知れないし、頼みたい事があるんだ」 首を傾げる玄葉に、一万円札を取り出して差し出します。 「遅くなるかも知れないから、今日の夕飯はこれで出前でも取っておいて」 「えっ」 戸惑う玄葉に対し、もう一言付け加えます。 「もちろん『三人分』ね」 「お兄・・・!うん、分かった。ちゃんと連れて帰って来てね。失敗したらお兄には食べさせないから」 玄葉はお金を受け取って微笑みます。私は玄関の扉を開けて、夕方のT山へ走り出しました。

コメント (8)

thi
2025/03/18 14:21

早渚 凪

2025/03/18 15:03

五月雨
2025/03/16 13:37

早渚 凪

2025/03/16 15:24

水戸ねばる
2025/03/16 13:21

早渚 凪

2025/03/16 15:24

Jutaro009
2025/03/16 11:26

早渚 凪

2025/03/16 15:24

サントリナ
2025/03/16 04:37

早渚 凪

2025/03/16 15:24

白雀(White sparrow)

間に合ってくれ…

2025/03/16 02:44

早渚 凪

テロリンとの戦いは江楠真姫奈に任せて、凪は自分の大切なもののために走る。次回『悲しい涙では逝かせない』お楽しみに!

2025/03/16 15:24

もみ

続きが気になる。どうなるの幽魅さん

2025/03/15 20:13

早渚 凪

もうすぐ幽魅編はおしまいになります。ただ、後日譚として凪の幼少期の回想エピソードも考えているのですが・・・これは画像生成や執筆が間に合うか分からないのでもしかするとちょっと間が開くかも知れません

2025/03/16 15:22

みやび
2025/03/15 16:44

早渚 凪

2025/03/16 15:19

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2024年7月よりAIイラスト生成を始めた初心者です。 全年齢~R15を中心に投稿します。現在はサイト内生成のみでイラスト生成を行っています。 ストーリー性重視派のため、キャプションが偏執的かと思いますがご容赦願います。

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