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真実・後悔・別離

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2025年03月14日 15時00分
使用モデル名:animagine-xl-3.0
対象年齢:全年齢
スタイル:イラスト
デイリー入賞 119

「公園で爆弾が爆発した日があったでしょう?あの時、その爆弾は私が運んでたんだ」 「運んでたって、どうして?・・・疑いたくないけど、やっぱり幽魅さんがこの一連の騒動に関係してるの?」 玄葉が悲しみとも憤りともつかないような低い声で問いかけますが、幽魅は寂しそうな微笑を浮かべたまま否定します。 「紅がね、ベンチに紙袋を忘れて行ったの。でも私って紅の目には見えないから、紙袋を彼の行く手にそっと置いておこうって思って。それで他の人に見つからないように上空まで持って飛んだら、運んでる最中に爆発したんだよね」 そうか、そう言えば公園の爆弾騒ぎは空中爆発で負傷者が無かったっていうニュースだった。あれは幽魅が爆弾を持って飛んでいたおかげで、そうじゃなければベンチ周辺の人たちが巻き込まれていたのか。 「それで犯人の顔を良く覚えておいて、凪君や玄葉ちゃんに特徴伝えて通報してもらおうと思ったんだよね。でも、その顔に見覚えがあった。名前だって自然と浮かんできたくらいに」 「紅に見覚えがあった?・・・お兄、紅の顔ってニュースとかになってないよね」 「そうだね、私が知る限りは。多分江楠さんが手を回してるんだと思うけど。あの顔を国際指名手配すると多分大騒ぎになるからじゃないかな」 普通の犯罪者ならともかく、紅は災害が服を着て歩いているようなレベルのテロリストです。下手に刺激したが最後、地域ごと吹っ飛ばされる危険さえあるんだし。そんな紅の顔を知っていたとなると、幽魅の生前について考えられる可能性は大きく分けて二つです。すなわち、テロリンの『敵対者』もしくは『関係者』。でも、江楠さんは私が調査依頼するまで幽魅の事を詳しく知らなかった。つまり、幽魅は。 「私が紅の顔に見覚えがあったのはね・・・」 聞きたくない。その先は聞きたくない。多分玄葉も同じ気持ちだったと思います。けれど、私たちは声が出ませんでした。 「私が『テロリンク』の一員だったから。それも、工作員に接触する役目のね」 想像していた最悪の可能性が、本人の口から告げられてしまいました。 「その反応だと、テロリンクがテロリンの支援組織って言うのは知ってるみたいだね。・・・だけどね凪君、玄葉ちゃん。私はもうテロリンに味方するつもりなんて起きなかったよ」 「え?」 どういう事だろう。生前テロリンの一派だったのに。 「幽魅さん、もしかしてそれって『自分が死んだ』から?」 「あ・・・そうか」 テロリンやそれに賛同する人たちの思想は基本的に『現代社会で生きるのが苦しい』事に起因しています。つまり、死んでしまった幽魅からしてみれば『生きる苦しみ』からは解放されているのです。 「恥ずかしながらその通りなんだよね。テロリンの事を思い出したけど、これまで過ごしてきた幽霊としての毎日を考えたらさ。毎日の不満とかを周りの人のせいにして当たり散らすのってすっごいバカみたいだって思った。工作員の人たちみたいに一線超えてる人間は、方向性はともかく行動してるだけまだバイタリティあるけど、私みたいに自分が何か直接犯罪に手を染めるでもなくテロリストの応援してるだけとか、本当にロクな人間じゃないなって。だから、罪滅ぼしにもならないけど紅にひっついて動いて、紅の仕掛けた爆弾が上手くいかないように邪魔してたんだよ」 「もしかして、中学校の爆弾がプールの中で爆発したりしたのは・・・」 「あれ、本当は家庭科室に仕掛けられてたんだ。あそこは調理実習のためにガス管が通ってるから、紅はそれを利用して被害を大きくしたかったみたい。時間が無かったからプールに投げ込む形になっちゃったけど、本当は爆発しないように壊したかったんだ」 もし幽魅がいなかったら、桃宮ちゃんや橙臣ちゃんも被害者になっていたかも知れないのか。人知れずすごい功績を上げていたんだ。 「待って幽魅さん、じゃあ衣料品店は?あそこの爆弾はどうして被害者が出たの?」 「あれは私の詰めが甘かった。本当にごめんなさい。紅の仕掛けた一個は上手く破壊できたんだけど、紅とタイミングをずらして他の工作員も爆弾を仕掛けてたみたい。多分、紅が自分の仕掛けた爆弾が上手くいかないのを訝しんで秘密裏に仲間に指示を出してたんだと思う。だからそっちに気付かなくて、結局爆破を許しちゃった」 「2回も自分の爆弾が想定外の動きをしたから対応してきたって事か・・・」 さすがに対応が早い。それに、やっぱり紅以外の工作員もたくさん潜んでるんだ。もういっそ江楠さんが何とかするまでこの町から逃げた方がいいのかも。 「でもね、もうこの町での作戦は失敗みたい。紅が他の工作員と連絡取り合ってるのを聞いたんだけど、工作員のほとんどが捕まったらしいの。ヤクザとか、やたら強いメイドさん達が襲って来たって言ってた」 「江楠さんの情報網に引っかかった工作員がやられたんだね。襲撃者は江楠組と金剛院メイド部隊かな」 「人数が足りなくなった上に、爆弾も失敗続きって訳ね。まあ爆弾もタダじゃないんだから数に限りがあるし、そうなるのも無理ないか」 作戦が失敗って事は、放っておけば紅はこの町から出ていくのかな。でも一応江楠さんにその情報を伝えて判断を仰ごう。 「それで幽魅は紅から離れて戻って来たんだね。お疲れ様」 「うん・・・でもそっか、やっぱり守り切れなかったかぁ・・・」 幽魅は残念そうな顔をして、部屋の隅の方に歩いて行きます。 「私ね、死んでから改めてこの町で過ごして、楽しかったんだ。生きている内には気付かなかった、素敵なものや面白い事、おいしい食べ物に温かい人たち。・・・守ってあげたかったなぁ。悔しいなぁ」 背を向けたその表情は窺い知れません。でも、幽魅が本気で悲しい気持ちでいるのは伝わってきました。 「そもそも、生前私がテロリンに協力なんてしてたのが駄目だったんだよね。小さい事で何もかもぶっ壊したくなって、資金や情報集めてさぁ・・・私って、ほんと馬鹿。馬鹿過ぎてもう死んでお詫びしたいくらい。死んでるけど」 「幽魅さん・・・」 「幽魅、もういいんだよ。十分大勢の人を助けたじゃないか」 「ほら、そういう優しい事言うでしょ。そんないい人達を・・・凪君や玄葉ちゃんもまとめて吹っ飛ばす事になってたかも知れないんだよね。大好きになれるはずの人たちを、全部いらないって壊すところだったんだよね。そんな私、ここにいていいわけがないよ・・・」 「幽魅?」 ゆっくりと振り向いた幽魅の頬には、悲しい後悔の涙。 「テロリストなんかに手を貸す前に・・・生きてる内に、凪君たちに会いたかったなぁ・・・!」 ぼろぼろと泣きながら、幽魅の姿が壁の中に消えていきました。 「幽魅!」 私は窓を開けて壁の裏手を見ましたが、既に幽魅の姿はありません。 「さよなら凪君、玄葉ちゃん・・・」 どこかから幽魅の声が聞こえてきました。それを聞いてようやく私は、幽魅がお別れを言いに来ていたのだと気付いたのです。 「幽魅・・・」 力なく漏らした呼び声は、夜に空しく溶けていくだけでした。

コメント (9)

thi
2025/03/17 13:52

早渚 凪

2025/03/17 15:08

水戸ねばる
2025/03/15 14:06

早渚 凪

2025/03/15 15:16

五月雨
2025/03/15 13:23

早渚 凪

2025/03/15 13:37

T.J.
2025/03/15 12:59

早渚 凪

2025/03/15 13:36

サントリナ
2025/03/15 03:20

早渚 凪

2025/03/15 04:16

白雀(White sparrow)
2025/03/15 01:58

早渚 凪

2025/03/15 02:28

Jutaro009

涙なしには・・・・

2025/03/15 01:15

早渚 凪

かわいそうなシーン書いてると心が軋んでるのを感じます

2025/03/15 02:28

七海もぐ
2025/03/14 22:44

早渚 凪

2025/03/15 02:27

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2024年7月よりAIイラスト生成を始めた初心者です。 全年齢~R15を中心に投稿します。現在はサイト内生成のみでイラスト生成を行っています。 ストーリー性重視派のため、キャプションが偏執的かと思いますがご容赦願います。

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