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ミリシラ様の異世界百景その16「スリジエ街道(旧エルブ街道)」

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2024年11月26日 15時00分
使用モデル名:ChromaXL_v1b
対象年齢:全年齢
スタイル:イラスト
デイリー入賞 83
参加お題:

地球の皆の者、こんクエスト~!全知全能の大賢者、「ミリシラ・シッタカブール」様じゃぞ! 今夜地球人たちにお届けするのは、「スリジエ街道」の夜桜じゃ!・・・言っておくが、ここ以外は普通に秋の季節じゃからな。このスリジエ街道だけが、一年通して春のまま変わらないんじゃ。察しの良い地球人は気付いているかも知れんが、ここもイヴェール大氷河と同じように魔物の影響で環境がこうなっている地域じゃ。今日は、その魔物の話を聞かせてやろうかの。 その昔、ここがまだ「エルブ街道」と呼ばれていた頃。ここは人の腰ほどまである背の高い草が生い茂るだけの街道じゃった。もちろん桜の木なんぞ生えておらん。王都と地方を行き来する行商人たちも良く通る、穏やかな道じゃ。しかしある時から、夜になると危険な魔物が出るという噂が立った。そいつは全身を異様な出で立ちの鎧兜で覆い、血のような赤い眼光をしたアンデッドの剣士じゃという。いつでも出る訳では無いが、出会ったら最後、逃げ切れなければその刀で真っ二つに切り殺されるという話であった。実際、いつものように夜道を馬車で通った行商人が道端に佇むこいつを見つけ、それと目が合った次の瞬間には馬が首を落とされていたという。行商人は必死で王都の門まで走ったが、折悪く門番が席を外しており、門の前で立ち往生してしまった。恐怖と絶望に泣きながら振り向いた行商人は、街道の入り口のところに立つ剣士の姿を見た。しかしそいつは追いかけるのをやめて、刀を仕舞うと街道の方に歩き去りながらすぅっと夜の闇に溶けるように消えたそうじゃ。どうやら街道を出れば追って来ないらしい。 そうした事が続き、死人の数が両手足の指では足りなくなった頃、冒険者ギルドにはこいつの討伐依頼が出された。名前は『桜の武者』。この魔物、知性が高いようで会話が出来る奴での。「我が刀『桜一文字則宗』の錆と成れ・・・」とこいつが喋るのを聞いた者が複数おったので、桜の武者と名付けられたようじゃ。当時はこいつは話題性のある魔物だったゆえ、多くの冒険者が名乗りを上げて、夜ごと街道を見回ったという。しかし、そのほとんどは出会えなかったか、出会っても殺されてしまい、討伐が一向に果たされなかった。そんな中、溢れる知性と弾むような乳房を持つ絶世の美女が『桜の武者』討伐に名乗りをあげた。美女が満月の晩に街道に出向くと、闇の中から桜の武者が現れた。美女と武者の戦いは一晩中続いた。美女は賢者でな、様々な魔術や聖術で武者を攻め立てたが、武者はどんな攻撃を受けても蘇り、また切りかかってきた。そして朝日が昇り始めると、武者はその光を受けて消え始めた。その際、奴はこう言い残した。 「ようやく見つけた・・・。貴様こそが我が好敵手にふさわしい『つわもの』よ・・・。貴様とは決着をつけねばならぬ。また夜のとばりが下りたならばこの地へ参れ」 美女はそれを聞くと、『お前はいつでもいる訳では無いのだろう。何かお前がいるという合図を出しておけ。また、私との決着がつかない内はもう他の者を切るな』と武者に言い放ったんじゃ。武者はそれを頷いて受け止め、 「ならばこの地に桜の木を生やそうぞ。その桜が花開いている内は我はここにいる。・・・他の者はもう切らぬ、好敵手は貴様と定めたのだから」 と言いながら朝の光に溶けた。そして武者の言葉通り、エルブ街道の道をなぞるように桜並木が生え、恐るべき速さで育っていった。美女と武者の戦いはほんの53年前じゃが、もうこんなに立派な桜になっておる。そして桜の花が開いて以来、ここは枯れない桜が一年中咲き誇る街道として有名になった。その際に、街道の名前も「スリジエ街道」と改められたんじゃよ。そして案の定、いつでもお花見が楽しめる場所として民衆がよく足を運ぶようになってしまいおった。昼だけでなく、夜も人がいる事が多いのぅ。時折、夜に武者のような姿が桜の木の陰に佇んでいるのを目撃する者もいるが、切られたという話はもう聞かぬ。奴は美女との約束を守り、今でも美女が決着をつけにやってくるのを待っているんじゃ。 ・・・という話じゃな。ちなみに、大きな声では言えんがその美女っていうのはワシの事じゃ。まだ決着をつけておらんのは、単純にダルイからじゃ。だってあいつ何やっても死なないんじゃぞ?氷結させて粉々に砕こうが、旋風でバラバラに切り裂こうが、業火で焼き尽くそうが再生しよる。あげくの果てにはアンデッドを浄化する聖術をもろに喰らっても普通に活動再開したからの。もうやだこいつって思ったところで朝が来て助かったわい。二度と闘いたくないわ。 「・・・童(わらわ)よ」 ん?誰じゃ、ワシを呼ぶのは・・・って、ぎゃあ!桜の武者!? 「童の魂の形、似ておる・・・。童よ、お主は我が好敵手か・・・?」 (ま、まずいぞ、ごまかす他ないわい!)・・・えー、おじちゃんだぁれ?みーちゃんむずかしいことわかんなーい! 「・・・・・・・・・・・・・・・」 (だ、ダメかのぅ・・・?) 「そうか・・・済まぬ、人違いであった。思えばそうよな、いかに魂の形が似ていようと我が好敵手はお主のような幼子ではなかった・・・。我が好敵手は苛烈にして、知啓に富み、何より豊かな乳房を持っていた・・・」 (・・・お、落ち着けワシ。今ぷっつんしたらアウトじゃ) 「ああ・・・我が好敵手よ・・・我はここにいるぞ・・・早う、あの燃え上がるような逢瀬を再び・・・早う・・・」 ・・・・・・・・・よ、よし。消えたな。しっかしあやつめ、ワシの外見を乳で覚えてたんかい。魔物のくせして失礼な奴じゃ。一晩中殺し合いした相手の顔より乳を見ておったとは。・・・まあ、派手に戦ったからぶるんぶるん揺れておったし、目についたんじゃろうなぁ。 ま、まあともかく。奴と決着をつけさえしなければ、奴が消滅せん限りここの桜も咲き続けるじゃろう。人を襲う事も無いようじゃし、ワシら人間にとっては良い事じゃ。奴には悪いが、決着は永遠につかない方が良いわい。この美しい景色を消したくはないしのぅ。さて、そろそろ終わりにしておくか。 見てくれてありがとうなのじゃ、おつカブール~! はぁ・・・魔物にモテてもしょうがないんじゃけどなぁ・・・。

コメント (11)

えりえりいん
2024年11月29日 22時33分

早渚 凪

2024年11月30日 01時30分

ルノハ:停滞中
2024年11月28日 14時46分

早渚 凪

2024年11月28日 14時50分

サントリナ
2024年11月27日 03時04分

早渚 凪

2024年11月27日 12時38分

猫団子🐈‍⬛🍡
2024年11月27日 02時13分

早渚 凪

2024年11月27日 12時37分

ぜんざい

しかしどうだろう、もうちょっとしたら暴れ狂うかもしれない… なのでどうぞどうぞ、決着をつけてください、早く早く

2024年11月26日 23時55分

早渚 凪

「今度あいつが暴れたらラファエル連れて行くわい。ラファエルの信力はワシよりずっと強いからな、多分桜の武者も昇天させられるじゃろ」

2024年11月27日 12時37分

Jutaro009
2024年11月26日 22時39分

早渚 凪

2024年11月27日 12時35分

白雀(White sparrow)
2024年11月26日 22時14分

早渚 凪

2024年11月27日 12時34分

JACK

中盤めちゃくちゃ良い話かと思ったf^_^; 笑

2024年11月26日 20時37分

早渚 凪

一行で要約すると「女が男との約束を一方的にすっぽかしている」だけの話ですw 桜の武者が一途な想いで咲かせた約束の桜は、果たされない約束のために今夜もまた咲き続けるのでしょう。

2024年11月26日 21時39分

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2024年7月よりAIイラスト生成を始めた初心者です。 全年齢~R15を中心に投稿します。現在はサイト内生成のみでイラスト生成を行っています。 ストーリー性重視派のため、キャプションが偏執的かと思いますがご容赦願います。

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