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ミリシラ様の異世界百景その9「シャベリー記念美術館」
地球の皆の者、こんクエスト~!!全知全能の大賢者「ミリシラ・シッタカブール」様じゃぞ!今日は周囲に配慮して、ちょっと声量控えめでお届けじゃ。 というのも、今日訪れておるのは「シャベリー記念美術館」なんじゃ。美術館で大声張り上げるのもマナーがなっとらんからのぅ。 シャベリー記念美術館は、ワシと同じ大賢者である“ロード・オブ・ザ・ダベリング”「シャベリー・ソール」が設立に多額の寄付をしたという来歴をもっており、それ故建物にも奴の名前が入っておる。別段奴が美術に興味があるって訳ではなく、単に税金逃れだったそうじゃが。 シャベリーは「口に出した事が現実に起きる」という魔法使いじゃ。他の魔法使いが詠唱して魔法を使うところ、シャベリーの場合魔力がありすぎて発言が全部勝手に「魔法の詠唱」になってしまい、その結果勝手に魔法が発動するという、まさしく生まれついての魔法の天才。そのため普段は何も口を利かず、一人ぽつんと過ごしているらしい。何せなにか喋っただけで現代魔法の最先端でも再現できない事象を起こすんじゃから、その影響力は甚大。国家を上げてその動向が監視されとるそうじゃ。以前奴がうっかり「世界滅びないかな」と漏らしたところ、月サイズの隕石が降ってきた前例あるしのぅ。あれ食い止めて破壊するの本当に大変じゃった・・・。 まあ、奴の話はこのくらいにしておくか。この美術館は大陸の中でも屈指の芸術都市に設立され、世界中の芸術家の作品が見られる。複製も本物もあるが、ここに本物を飾れるのはもう芸術家として一つのステータスじゃな。作品は全て強力な防御魔法で守られておるので、実際に触って確かめる事もできるぞ。ただ、製作者が魔法の才能を持っている可能性もあるからな。悪意を持って触れれば製作者の込めた想いが反応し、盗人を食い殺すなんて事も起こりうる。絵画の世界に引きずり込まれたものもおるし、作品に触れるのは自己責任じゃな。敬意をもって、静かに鑑賞するのが一番ベターなのかもしれんわい。 その他、ここは芸術に興味を持っている人間のための体験教室なども開かれておる。絵画・彫刻・陶芸などなど、およそ芸術に関する事なら大体やらせてもらえるぞ。ワシもちょっと絵を描いてみるかのぅ。 (数時間後・・・) こんなもんじゃな。タイトルは「正午の星空」なんてどうじゃろ。・・・ちょっと流転する星を描き過ぎたかもしれん。近くで見るのと遠くで見るので大分印象変わる絵になったのぅ。 あ、いかん!絵を描いておったら大分時間をくってしもうた。また忘れる前に地球人たちにお別れしておかんとな。 見てくれてありがとうなのじゃ、おつカブール~!! あっ、服に絵の具がたれておった!染み抜き面倒じゃなぁ・・・。