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【日焼け止め】対決ヒヤケルス!紫外線100%カット攻撃
「ビハァーク!」 市民公園の陸上トラックに大きな怪物が降り立った。胸には「sunblock」って書いてある。 「フフフ、行きなさい!日焼け止め怪獣『ヒヤケルス』よ!」 そして笑いながら怪物をけしかけてくる緑色の肌をした女の人。私達マジカヨが戦っている相手、悪の組織『ヤバーイ』の四天王の一人、解剖博士バラバラヴァーだ。 「日焼け止め怪獣のクセして日に焼けそうな名前しやがって」 隣でロジカルがぼそっと呟いた。うん、分かるけど今はそれどころじゃないよね。 「ひ、日焼け止め怪獣って事は、もしかしてその攻撃方法って・・・!」 私が恐る恐る口にすると、にんまりと笑ったバラバラヴァーが自信たっぷりに説明を始める。 「そう、ヒヤケルスは紫外線をカットする能力があるのよ!ヒヤケルスからモクモクと出ている雲が分かるかしら!これは太陽光に含まれる紫外線を『驚異の100%カット』するのよ!」 「あっ、そ、そうなんだ?」 「おいリリカル。オメーどんな攻撃だと思ってたんだ」 「い、いや~。私たちを丸呑みにした後で、体の中で拘束して服とか溶かしてから全身に日焼け止めをぬりぬりしちゃうのかな、な~んて・・・えへへ」 「放送コードにモロ引っかかるわボケ!」 うう、ロジカルの言う通りだ。昨日読んだお兄ちゃんの漫画のせいだよぅ。 「むぅ。それは戦闘能力に影響するのか?ワレには分からぬ」 あっ、確かに。紫外線が無くなったからって真っ暗になったりする訳じゃないもんね。フィジカルの言葉を聞いた私がバラバラヴァーに視線を向けると、彼女は続きを説明し始めた。 「あなたたち、紫外線が全くこの地上に降り注がなくなったらどうなるのか、分かっていないようね。いいわ、説明してあげましょう。まず、紫外線は多過ぎればお肌に悪いけど適量ならビタミンDの生成を促し丈夫な骨を作ったり免疫力をアップさせるはたらきがあるの。さらに殺菌効果があるのよ、お外に洗濯物を干していると紫外線の効果で雑菌の増殖が抑えられさらには消臭効果も期待できる。ヒヤケルスの生み出す雲はそれらのプラス効果を全て消してしまうのよ!」 「オイなんか教育テレビの科学番組みてーな解説始めたぞアイツ」 「せっかくだ、聞いてやろうではないか。意外とワレらが知らなかった紫外線のはたらきが聞けるかもしれん」 「そ、そうだね。説明してる間は、あの怪獣も暴れたりしないみたいだし・・・」 私たちは黙ってバラバラヴァーの講義に耳を傾け続けた。10分くらいもしただろうか。ようやく話が途切れた。けど、その途端にフィジカルが蹲ってしまう。 「ふぃ、フィジカル!?どうしたの!」 「むぅ・・・力が入らん。まさか、これが紫外線がカットされた影響なのか」 「フフフ、馬鹿ね!わざわざ長ったらしい説明をしたのは、マジカヨフィジカル!あなたの変身していられる時間をすり減らすための時間稼ぎだったのよ!」 「あ」 しまった!フィジカルはとっても強い分、変身できる時間が短いんだった!説明を聞いてる内にエネルギー切れになっちゃったんだ! 「フィジカルが戦えなければ、リリカルとロジカルなんて敵じゃあないわ!さぁヒヤケルス、奴らをやっつけるのよ!」 「びはぁ~く・・・」 ・・・あれ?何かあの怪獣も疲れ切ってるような。まだあっちも何もしてないのに。 「クックック、かかったのはそっちも同じだったようだな。そら、そろそろ降り始めるぜ」 ロジカルが不敵に笑うと、空からぽつぽつと小雨のようなものが降り始めた。・・・違う、これ雨じゃなくてロジカルの魔力砲だ。いつも上空から雷みたいに落ちてくるのに、今日は細かくてちっとも痛くないけど。 「ごく小さい魔力砲の雨?こんなものが何だと?」 「オイオイ、さすがにそんなに微細なコントロールは出来ねェよ。これはな、上空でお前の怪物が生み出した雲と相殺した残りカスさ」 「ヒヤケルスの雲と相殺・・・ですって!?まさか!」 バラバラヴァーが目に見えて慌て始めた。ロジカルは一際勝ち誇ったように笑う。 「そう、そのデカブツはな、オレの降らした魔力砲で次々雲を消されちまってたのさ!だからそれを補うために、オメーが鼻高々に説明してる間にも頑張って雲を作り続けてたんだぜ!エネルギー切れになるのも当たり前だよなァ!?」 「ば、馬鹿な!じゃあ私が紫外線の説明を始めた時には既に攻撃を仕掛けていたと言うの!?」 ロジカル、すごい!こっそり手を打っていたんだ! 「フィジカル以外は戦力外だと思い込んだオメーの負けだ、バラバラババア!オイリリカル、トドメをさしてやれ!」 「う、うん!リリカル・バスターカノン!」 私の放った魔力砲で、ヒヤケルスは光の粒になって消えてしまった。 「キーッ!覚えてなさいマジカヨ達!あとロジカル、私の名前はバラバラババアじゃなくてバラバラヴァーよ!」 バラバラヴァーは悔しそうに転移魔法で逃げて行った。私たちの勝利だ! 「・・・でも今日も、私いいところなかったなぁ!?」 「トドメささせてやったろ」 「それだけじゃん!ロジカルの方が絶対活躍してるよぉ!」 「ワレなど本当になにもしていないからな。今日はリリカルとロジカルの勝利だ」 そんな風にわちゃわちゃしながら、今日も私たちは町の平和を守るために魔法少女やってます。