【青空ヨガ】ヴァニラの運動着

「♪」 新しい運動着に身を包んだヴァニラは、上機嫌で女子寮の中庭に駆け出した。外見上はオーソドックスな体操服スタイルだ。 「ヴァニラ、他の人の迷惑にならないようにね」 一方、ヴァニラの新しい運動着を作った私は、かなり疲れていた。ヴァニラの納得する運動着に到達するまで大分面倒だったから。 まず、上半身裸を何とかしようとスポブラをつけさせようとしたが、全力で拒否された。水着も同じで、絶対に着ないし無理矢理つけても外してしまう。普段の服と何が違うのか、乳暖簾以外の部分で考えてみたら、何となく「胸を締め付けられるのが嫌」なんじゃないかという仮説が立った。 そこで、次はノーブラのまま体操服を着せてみた。するとこれはあまり気に入ってはいないものの、積極的に脱ごうとはしなかった。けど、運動させてみると二つほど問題が見つかった。一つは乳首が体操服の裏地に擦れてしまって痛いらしく、しきりに胸を押さえる様子が見られた。で、もう一つはその刺激のせいもあって、体操服の上からでもポッチが分かってしまうのでこれじゃ男子達大喜びだろうと思い、体操服をそのまま使うのは諦めた。 そこからが大変だった。体操服の胸の部分の裏地に『擦れても痛くない素材で透け防止のあて布をする』と決めたまでは良かったが、そんな肌触りのいい上質な布地、そうそう手に入らないのだ。あれやこれやと文献をひっくり返し、最終的には冒険者ギルドに依頼まで出してチンチラのような質感を持つ魔獣の毛皮を手に入れる羽目になった。 「♪」 「でもまあ、苦労の甲斐はあったかな」 おかげでヴァニラは人前に出せるような格好で運動できるようになった。・・・ていうか、あの運動着を着て動けるのは中々すごいな。私も試作段階でノーブラになって着てみたんだけど、あまりにも魔獣の毛皮が肌触りが良過ぎて・・・少し身じろぎするだけで柔らかい筆に優しく先っぽをくすぐられるような刺激が襲ってきて、とても着てられなかった。 「ヒマリー、ボクが狩ってきた魔獣の毛皮を使った服が出来たんだって？」 と、丁度そこにキレーヌさんが現れた。何を隠そう、毛皮の調達はキレーヌさんがやってくれた。最上級の肌触りを持つその魔獣は恐ろしく強いので、普通の冒険者に頼んだら十人近いパーティになるため、依頼料が跳ね上がる。ソロで狩れるような冒険者が知り合いにいて良かった。 「ああ、キレーヌさん。その節はお世話になりました。ほら、あの運動着がそうですよ」 「へー・・・って、ヴァニラじゃん！」 キレーヌさんはヴァニラを見るなり、顔から火が出るほど赤面して慌て始めた。この前、フラワーマーケットで大暴れした件でミリシラ先生に連れて行かれてたけど、その時何かあったのかな？ 「キレーヌさん、ヴァニラが危険な魔物じゃない事は分かってもらえたんですよね？」 「うん、うん！分かった、分かったから！だからもうああいうのは駄目だよ！」 ああいうの？ 「おー、キレーヌではないか」 「あ、ミリシラ先生」 丁度良くミリシラ先生がやって来た。ちょっと聞いてみようか。 「ミリシラ先生、この間キレーヌさんがフラワーマーケットで暴れた後、何かしたんですか？ヴァニラを見るなりこんな感じなんですけど」 「ん？あー、そうじゃな。ヴァニラがバニートラップの呪いをもう持ってない事を実体験させた」 実体験させた？・・・それってまさか。 「ちょっとミリシラぁ！」 「口で言っても全然信じようとせず不貞腐れておったからのぅ、衰弱呪文で筋力を一般女性程度に弱らせてやった後に、寝室にヴァニラと一緒に一晩閉じ込めてやった。もちろんヴァニラには興奮剤を飲ませた上でじゃぞ」 「うわぁ・・・」 ヴァニラは元々、男性を誘惑して肌を重ねて人参に変える生態を持つ魔物だ。そのせいだろうか、その能力が失われても本能的に『そういう行為』が上手い。男性を興奮させるツボも心得ているようだし、自分がメスだからなのか女の子を気持ち良くするのもお手の物だ。ヴァニラが興奮してる時に同じ部屋で寝るなら、何らかの対策をしないとまず間違いなくぐちょぐちょにされる。 「翌日のベッドの様子は目も当てられんかったな。買い替える羽目になったわい」 「だってヴァニラ、ボクが失神してもやめてくれないんだもん！後半なんか意識無いまま滅茶苦茶にされたんだからね！？あんなの何回もされたらもうボク男の人とケッコンできなくなっちゃうよ！」 キレーヌさんは思い出したのかしっかり胸をカバーしてる。あれだけ大きければ、ヴァニラの興味の対象となるには十分だろうな。巨乳が裏目に出たってとこだろう。 「？」 ヴァニラがこっちの騒ぎに気付いたのか、とてとてとこっちに歩いてきた。キレーヌさんを見てしばらく考えた後、「する？」とでも言わんばかりに寝転がって足を広げる。 「し、しない！しないからね！ボク用事を思いついたからもう帰るー！」 キレーヌさんは顔を真っ赤にしたまま帰ってしまった。 「ミリシラ先生、後でキレーヌさんにはちゃんと謝った方がいいと思いますよ。ヴァニラに一晩責められたら普通の女の人耐えられないんで」 「分かっとるわい。あやつが根に持つと面倒くさいからのぅ」 ちなみに、肝心の盗撮犯への抑止効果はあったのかというと。 「ねぇヒマリ、男子達にヴァニラの写真かなり出回ってるよ？」 「うーん、エロくなくても人気あるのかぁ」 「あー、何かね。下半身の服装が人気らしいよ」 ブルマか。言われてみればこの世界ってキレーヌさんみたいな人もいるから感覚麻痺ってたけど、ブルマって普通に性的だよね。世界が変わっても男子の本能って変わんないのか。 「食い込みを直す仕草が『 正義（ジャスティス） 』って言ってたよ」 「んな淫らな正義があってたまるか」 今度ブルマに幻覚魔法仕込んで、もんぺみたいに見えるようにしておいてやる。