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蒼穹のフロンティア 番外編【蒼海に落ちた翼】
激戦の最中、突如として発生した時空の歪み。 それに巻き込まれた第7機動艦隊旗艦テンペストは、制御を失ったまま未知の領域へと転移した。 辿り着いたのは―― 青く澄み渡る空と、どこまでも広がる蒼い海に包まれた孤島。 アイピク島と呼ばれるその場所は、戦火とは無縁の、静寂に満ちた楽園だった。 損傷を抱えながらも、戦艦テンペストは海上へと緊急着陸。 幸いにも大破は免れ、乗員たちは束の間の休息を得ることとなる。 ――そして、アリシアたちは気づく。 「……静かだわ」 銃声も、爆炎もない。 ただ、波の音と風の匂いだけがそこにあった。 張り詰めていた緊張が、少しずつほどけていく。 それは、長く戦い続けてきた彼女たちにとって、あまりにも久しい“平和”だった。 やがて彼女たちは、装備を脱ぎ、海辺へと足を運ぶ。 陽光にきらめく水面、柔らかな砂浜、そして優しく揺れる潮風。 アリシアは、ふと振り返る。 遠く海上には、静かに佇むテンペストの巨影。 戦いの象徴であるはずのその戦艦が、今はただ、この穏やかな世界に溶け込むように浮かんでいた。 「……たまには、こういうのも悪くないわね」 その言葉とともに、彼女は波打ち際へと歩き出す。 笑い声が、海風に乗って広がっていく―― それは、束の間の休息。 だが確かに、彼女たちが守ろうとしている“世界の形”そのものだった。
