1 / 6
蒼穹のフロンティア 番外編【月下に咲く、二輪の記憶】
満月が静かに夜空を照らし、淡い光が桜並木を銀色に染めていた。 風が吹くたび、無数の花びらが舞い上がり、まるで時がゆっくりと流れているかのような幻想を生み出す。 その中に並んで立つ、二人の女性――イザベルとリリア。 白を基調とした華やかな着物に身を包むイザベルは、腕を軽く組みながら、どこか誇らしげに微笑んでいた。胸元に舞い降りた桜の花びらは、まるで彼女の静かな強さと美しさを象徴するかのように、そっと留まっている。 一方、柔らかな桃色の着物を纏ったリリアは、小さな缶を胸元に抱え、少し照れたような優しい笑みを浮かべていた。彼女の胸元にも花びらが落ち、夜桜の中でひときわ儚く、そして温かな存在感を放っている。 「こんな静かな夜、久しぶりですね」 リリアがぽつりと呟く。 「ええ。でも――悪くないわ」 イザベルは空を見上げ、月と桜を同時に映す。 戦場でも任務でもない、ただの夜。 何も背負わず、何も戦わず、ただ隣にいるだけの時間。 花びらが二人の間をすり抜け、やがて地面へと落ちていく。 その一瞬一瞬が、かけがえのない記憶として刻まれていく。 この夜は、きっと―― 誰にも知られることのない、二人だけの“静かな約束”だった。
