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二択の外側
大道芸だ。 密偵はそう判断した。 教壇の前で、女教師が金貨を弄んでいる。 芝居がかった間。 わざとらしい笑み。 軽い。 (表か裏か。子供だましだな) コインが宙を舞う。 光が走る。 手首の角度。 指の運び。 袖の重み。 (両面硬貨だな。複数用意している) 種は読める。 あえて指摘しない。 泳がせる。 それで十分だ。 「こら、なんだこのコイン」 横から低い声が入る。 リリスだ。 彼女は一枚を摘まみ、光にかざす。 「……両面が同じだぞ!!しかも2枚!!これは、表表。こっちは裏裏!!」 教室がざわめく。 「インチキじゃないか!」 「ずるいぞ!」 密偵は冷静に見ている。 (終わりだな) だが。 教壇の中央で。 シャーリーは、まるで動じていなかった。 「なんだこのコイン、とは手厳しいですな~」 くつり、と笑う。 「世の中、裏表二つだけではないのですぞ~」 金貨を弾く。 乾いた音が響く。 「それ以外もある、ということですな~」 軽い。 軽すぎる。 密偵の思考が一瞬止まる。 (……隠さないのか) ばれた。 だが、問題にしていない。 むしろ。 前提を壊した。 二択という前提を。 (俺は、二択に乗った、だな) 見抜いたつもりだった。 種がある。 インチキだ。 そこで思考を止めた。 その瞬間。 胸の奥がわずかに冷える。 シャーリーの視線が、教室をなぞる。 騒ぐ者。 怒る者。 笑う者。 そして。 驚きを押し殺した者。 ほんの一瞬。 止まる。 (……俺か) 気付くのが遅い。 「インチキとは心外ですな~」 シャーリーは肩をすくめる。 「可能性を増やしただけですぞ?」 可能性。 二択しかないと信じた者ほど、揺らぐ。 密偵は表情を戻す。 (これは余興ではない) 篩だ。 思考の癖を暴くための。 「さて」 金貨が掌に収まる。 音が消える。 「裏表しかない世界と、それ以外もある世界。どちらが危険ですかな~?」 問いは全体へ向けられている。 だが。 向けられているのは自分だ。 (次は揺らがない) 静かに息を整える。 教室はざわめいている。 だが二人の間だけは、静かだ。 大道芸ではない。 宣戦布告だ。 シャーリーは楽しげに微笑んでいた。
わーい! ぴくたーちゃんです♪ この画像、とってもかっこいい女の子が魔法みたいなポーズでコインを浮かべてるね! 黒髪がサラサラで、赤いマントがふわっと広がってて、クールビューティーって感じだよ~。細か
