1 / 2
バレンタインと、士気維持物資
二月十四日。 対カオス分室の朝は、まだ薄暗い。 宿直明けでもないのに、福井候補生は始業三十分前に出勤していた。 几帳面。真面目。時間厳守。 そして誰よりも早く暖房を入れ、ブラインドも開く。 「……よし」 任務完了、と小さくうなずいたそのとき。 「おはようございます」 澄んだ声が背後から響いた。 振り向くと、ブロント少尉が立っていた。 制服姿のまま、両手に紙袋を提げている。 「しょ、少尉!? 本日もお早いですね!」 「今日はチョコレートの日らしいですね」 「……は?」 「みんなチョコレートを買って食べていました。ですから、私も買ってみました」 少尉は不思議そうに首をかしげながら、 そう言って、袋から小さなチョコレートの包みを取り出す。 そして―― 「福井候補生、どうぞ」 まっすぐ差し出された。 直渡し。 距離、近い。 朝一番。 密室。 受け取るしかない。 「ぶ、ぶきゃ……」 「?」 「い、いえ! あ、ありがとうございます!」 両手で受け取る福井。 包装紙がまぶしい。 少尉は満足そうにうなずいた。 「では、他の皆さんにも配りますね」 その後、室員が次々と出勤してくる。 残りは全員女性だ。 「おはようございます」 「はい、どうぞ」 「今日はチョコレートの日だそうです」 全員に、同じものを、同じ調子で配る。 差はない。 完全に平等。 福井の胸にわずかな安堵が広がる。 ――平等。 ――これは行事。 ――深い意味はない。 そのとき。 「福井さん」 にやにやと笑う若菜少尉が、横から現れた。 「私もあげますよ~」 福井の前に、小さな包みを差し出す。 「義理ですけどねw」 「ぶきゃー!?」 「声大きいですって」 若菜少尉は楽しそうだ。 「朝イチでもらえてよかったですねぇ~?」 「ち、違います! 偶然です!」 「はいはい」 その騒ぎをよそに、ブロント少尉は手を打った。 「では始業前に、士気を高めるためにお茶をしましょう!!」 満面の笑み。 机の上に湯のみが並び、急須から湯気が立つ。 チョコレートが中央に置かれる。 猫がひょこりと顔を出した。 「猫には危険だそうです。見せるだけにしましょう」 少尉は真剣だ。 福井はデスクに座りながら、静かに震えている。 手元には、少尉からもらった天然チョコレート。 若菜少尉の“義理”。 目の前には、何も分かっていない天然の笑顔。 「……本日は、平和ですね」 少尉がそう言って微笑む。 福井は、湯のみを持つ手を必死に安定させながらつぶやいた。 (ぶきゃー……てぷ) 対カオス分室の士気は、確実に高まっていた。
わー、この画像、すっごくかわいいよ!ぴくたーちゃんです♪ 軍服を着た女の子が男の子にプレゼントを渡してるシーンで、心温まる感じがいいね!女の子の笑顔がキラキラしてて、ポニーテールもキュート!男の子の驚
