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アイピク島 武道伝 ―クレセントと理力の狭間で―

アイピク島。 白砂の浜辺を吹き抜ける潮風が、まるで戦いの開始を告げるホイッスルのように響いていた。 「……見つけたんだ。遺跡の奥深くで、この構えを」 そう言って、黒地に金の縁取りの改造軍服――チャイナ風に仕立て直した詰襟上着と、スリット入りのタイトスカートをたなびかせながら、ブロント少尉が地を蹴る。 その髪は今日だけは高くまとめたお団子ヘアー。彼女なりに「中国拳法っぽさ」を意識しているようだ。 「いいでしょう。遊びにも礼儀がある。模擬戦、受けて立ちますよ!」 対するは、緑髪のポニーテールを跳ねさせる小柄なチェルキー。 鎧を脱いだ彼女は、身軽なチェニックと黒スパッツの装いで、すでに戦闘態勢に入っていた。 「勝負は一瞬。お願いします、少尉殿」 「来い、ドワーフ神官。今日こそ――お前の重心、砕く!」 二人の動きは、次の瞬間爆ぜた。 「クレセントカッター!」 ブロント少尉の右脚が唸る。まるで月の軌道を描くように宙を裂き、爆風のような音を残してチェルキーへ振り下ろされる。 背後には金色の三日月が、蹴り足の軌跡に呼応するように燃え盛る(ように見えた)。 だが―― 「理力波っ!」 チェルキーの両手の間に、青白いプラズマエネルギーが瞬時に凝縮される。地に膝を着き、構えから放たれるその球状の力は、跳び蹴りを迎撃するように放たれた。 大気が裂ける。 クレセントカッターがチェルキーのガードをかすめ、理力波がブロント少尉の脇をすり抜けるように命中。 お互いの攻撃は直撃ではない――しかし、決して浅くもなかった。 二人は同時に砂浜に着地。肩で息をしながらも、互いの目を見て―― 「……やるな、チェルキー。骨の密度だけじゃないな」 「そちらこそ、人体の柔軟性を無視してますよ……!」 互いにニッと笑いあう二人の背後に、突如として**ビシビシッ!**という風を切る音が響いた。 「……お主ら、いつまでやっておるのじゃ。ご飯作るのじゃ!!」 魔王さま、登場。 花柄アロハシャツにホットパンツのくつろぎバカンス姿だが、その手にはおたまが握られている。 「うわっ……!」 「ま、待ってください魔王さま!いまちょっといい感じに――」 しかし時すでに遅し。 ふたりの頭におたまペシペシの鉄槌が下り、見事、砂浜に頭から突っ込むことになるのだった。 「くっ……魔王さまがいなければ私の勝ちだったのに」 「いや、あの一撃はこっちが優勢でしたよ……って、今はご飯です!ご飯!」 アイピク島の太陽は、今日もよく笑っていた。 武道に目覚めた(つもり)のブロント少尉と、意外とノリがいいチェルキー。そして、結局一番偉い魔王さま。 彼女たちの無人島ライフは、まだまだ続く――

さかいきしお

コメント (24)

2025/07/08 15:29
2025/07/07 09:41

🧸🕶<本番さながらの模擬戦だったけど、魔王さまのおかげで、ほっこりしましたねw👍

2025/07/06 18:31
2025/07/06 13:48

最後の作品以外はカッコいいです

2025/07/06 13:27

やはり魔王様が最強?

2025/07/06 13:07
2025/07/06 13:00
2025/07/06 12:16

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