番長決戦、河原にて――清楚は誰のもの？

ブロント少尉が、五月雨さんの所の悪役令嬢に、河原に呼び出しを受けたのではせ参じます。 https://www.aipictors.com/posts/586891 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 夕暮れの河原。 赤く染まった空の下、川面は静かに揺れている。カラスの鳴き声が一声遠く、風が頬を撫でる。 あたりに人気はない――決闘にはふさわしい場所だった。 その中心に、腕を組んで仁王立ちしている少女が一人。 晒しに包まれた胸元、羽織った学ラン、足元は下駄。逆光を受けて光る金のツインロールが風に弾ける。 「ふふふ……お待ちしておりましたわ、少尉！ ここで、雌雄を決する時が来ましたわね！」 風が吹き抜ける。レイ＝篠宮＝エーデルシュタイン、通称レイちゃんは、学園の風紀と規律を背負いし生徒会長にして、今日この日のためにその髪を3割増しで巻いてきた。 ――が。 遠くから聞こえてくるのは、バタバタと小走りの足音。 それは音のスピードに反して、とても締まりのない気配を纏っていた。 「まって～、着替え、間に合ってない～～～！！」 ドスッ、ザッ、ドン！ 土煙を上げて河原に滑り込んできたのは、汗に濡れた額をタオルで拭う、もう一人の少女だった。 金髪ポニーテールに、白い体操着と紺色のブルマ。ハイソックスとスニーカーの組み合わせは、妙に清潔感すらある。 そしてその上に羽織った黒い詰襟の軍服――ボタンは外され、胸元から体操着の白が覗いていた。 「さっきまでラグビー部の練習試合してたんだよ～！ セーラー服持ってきたから今から着るねっ！」 言うなり、彼女――ブロント少尉はその場にしゃがみ込み、ガサゴソとカバンを漁り始めた。 レイちゃんは、片眉を跳ね上げた。 「……⁉　な、なぜその姿⁉　そしてなぜ今⁉」 「だって、『雌雄を決する』って言ってたから、記念写真とかあると思って！ 制服で写りたいじゃん？」 体操着の上からセーラー服の上を羽織り、スカーフをよれた手つきで首元に巻く。 その全行程に、迷いも照れも一切ない。まるでこれが日常であるかのような自然さ。 「そ、そんな理由で⁉　そしてなぜか行動が合理的で否定できない自分がいるのが悔しいですわ……ッ！」 「はい、オッケー！ よし、で、誰と戦うの？ 私応援するね！」 「……あなたとですわよ……少尉……！」 「えっ……私、女の子だよ？」 目を丸くして首を傾げる少尉に、レイちゃんは思わずその場に膝をついてがっくりと項垂れた。 「……ねぇ、番長」 その肩越しに、ひょいと少尉が覗き込む。 「番長言うな！ 私はただの生徒会長兼風紀委員長ですわ！」 「うんうん、でも“番長”って響き、ちょっとかっこいいよね～。背中に哀愁あって、夕焼け似合って、ケンカ強くて……あと、となりに清楚な子がついてるの」 「……なぜそこで自分が入ってくるんですの⁉」 少尉はセーラー服の袖をいじりながら、天使のような笑顔で応える。 「えへへ。清楚ポジションって……こういうやつでしょ？」 そう言ってポーズを決めた瞬間―― セーラー服の裾から、はみ出すようにのぞく紺ブルマ。 夕日を浴びて、レイちゃんの絶叫がこだました。 「下がブルマなんですけどぉぉぉぉ!!」