【楽器】ミリシラ様の異世界百景その22「メネストレル楽器店」

地球の皆の者、こんクエスト～！全知全能の大賢者「ミリシラ・シッタカブール」様じゃぞ！今日は王都の中央商店街の一角にある「メネストレル楽器店」にお邪魔しておる。 メネストレル楽器店は王国全土に支店を持つ、業界シェアNo.1の大手。王都にあるここは本店となっておる。ここには大きく分けて二種類の楽器が置いてあってな。一つは量産され、魔法技術によって誰でも簡単にある程度のレベルの演奏ができる『魔導楽器』。もう一つは古代遺跡などから発掘された遺物を修復した『古代楽器』じゃ。ワシの興味はもっぱら古代楽器の方じゃな。何せワシ、音楽活動は特にやっとらんからのぅ。 魔導楽器はセットされた魔法石をエネルギー源として使い手の思念を読み取り、使い手がどんな腕前であろうがイメージした曲が同じなら大体同じ音が出せるんじゃ。もちろん楽器の種類によっては鳴らない音もあるがの。だから歌が下手な者でも「こんな音楽だ」というのを概ね他人に伝えられたりするため、作曲依頼をしたい人間が音楽家に曲を伝える時にも活躍したりするぞ。魔法石を外せば普通の楽器としても使えるので、プロの音楽家は大体魔法石を外した魔導楽器を使っておる。 一方で古代楽器は、発掘された時の状態が大体劣悪じゃ。木材で出来たものなんかは特に、朽ち果ててもう原型も怪しいものが多い。同じく発掘された当時の資料などを参考に、修復職人たちが「ここの部品はこうじゃないだろうか」「こんな仕組みで音が出ていたんじゃないか」という推察をしながら修復するため、原典と違う形になっているであろうものばっかりじゃな。鍵盤楽器みたいなからくり仕掛けが複雑なものは、押しても反応のない鍵盤もあったりするしのぅ。じゃが、当時これらを作った人間がどういう考えで楽器をデザインしたのかなど、そういうところに思いを馳せながら修復するのにロマンがあるとは思わんか？ ちなみに、全ての楽器は触って試す事が出来るぞ。多少壊れたところで、修復魔法があるから割と簡単に直せるからな。・・・ん、あれはヴァニラではないか。おおい、ヴァニラ！お主こんなところで何をしておる？ヒマリはどうした、一緒じゃないんか？ 「？」 ・・・分かっておらん顔しておるのぅ。もしかして迷子か？ま、仕方ないか。バニートラップは好奇心旺盛じゃからのぅ。 「♡」 ん？お主この音が気に入ったんか。耳が大きい分聴覚に訴える要素が気になるんかのぅ。ほれ、お主もやってみぃ。・・・いや下手じゃなぁ！？魔導楽器使ってるのにこれか！いや待て、そういう文化の無いバニートラップの頭の中に音楽や歌を求める方が間違いじゃったか。仕方ない、ワシが演奏してやるか。 （ぴょんぴょん） ・・・おい、あんまりぴょんぴょんするな。乳が暴れておるではないか。男どもが見ておるぞ。 「ちょっとミリシラ先生、ヴァニラに何をやらせてるんですか」 ん、来たかヒマリ。こいつが迷子になっていたので相手してやってたんじゃ。お主こそヴァニラから目を離すでないわい。お主は意識しておらんかも知れんがな、ヴァニラは魔物なんじゃぞ。悪く言えば『人殺しの害獣』なんじゃ。 「そんな言い方しなくてもいいじゃないですか。それにもう呪いの力は無くなってるんだから無害ですよ」 ・・・お主、犠牲者の遺族の前でそれ言えるか？ 「そ、それは・・・」 良いか、今は確かに無害になっておるが過去が消えてなくなる訳では無い。ヴァニラがバニートラップだと知れれば、仇討ちと称して命を狙う輩もいるかも知れん。姉を気取るんであれば、そうならんようにお主がしっかり守ってやるんじゃ。 「・・・分かりました。行こう、ヴァニラ。ミリシラ先生、失礼します」 「♪」 行ったか。さて、何だか妙な空気になってしまったのぅ。ワシも発信終わりにするか。 見てくれてありがとうなのじゃ、おつカブール～！