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蛇人間の脅威?
「お母様、信仰心が無い割には、よく神殿に行きますよね」 シルビアは、隣を歩いているダークエルフ、アーゼリンに話しかける。 二人連れだって、王都近郊にある、東洋風寺院に向かうところだ。 「うん、長く生きているとな。信仰心とは別に、友好というか、付き合いが出てくるものだ」 美食の神様の降誕にも立ち会ったとか、法螺拭いていたしね。 シルビアは、母の言う事は嘘800ぐらいに聴くことにしている。 「今年は、蛇に縁があるらしくてな。タキザワ殿が蛇にまつわる友人の巫女を呼んでいるらしい」 アーゼリンは友人である東方竜の名前を出す。 (竜と友達だっていうし。う~ん?) シルビアもまだ、母の交友関係や過去について完全に把握しているわけではないのだが。 向かっているのは、東方竜タキザワが神殿長を務める、東方由来の寺院だ。 新年の行事が行われるらしくて、今年はシルビアが母に付き合っている。 「ようこそおいで下さいました」 神殿の奥から現れた巫女服姿の女性?の姿を見て 「ラミア!!」 シルビアは、杖を構えると大きく距離を取って身構える。 いつもと違い、体にぴったりとした東洋風のローブ姿だったので、裾が大きく割れて両足が露出する。 現れた巫女は、白い肌に真っ白な髪、赤い瞳に……、巫女服の裾から巨大な蛇の胴体が出ていたのだ。 『「Nara'z veshal darak shaeden, sora'k mithre vian. Asharim thoras ul'tien vahn. Arviel dor athran shaeden vash'tal!」) (「闇の精霊シェードよ、姿を覆い隠す壁を築け。この地に暗き帳を降ろし、愚かなる者を退けよ。闇の加護をもって我らを守れ!」』 アーゼリンの低く深みのある声が不思議な詠唱を行い、周囲をや闇の壁が覆う。 「おっ、お母様、いきなり何を!!これじゃあ何も見えない」 「私は暗視ができるから大丈夫だ」 「そんな問題じゃないでしょ!!」 「シルビア、裾が乱れている。みっともない」 「あっ、ちょっと何をするんですか」 光を通さない闇の中で親子で何かしている声がした後。 「羅巳どの、すまなかったな。娘はこれで結構融通が利かなくてな。 シルビア、彼女は、東方の神に仕える、蛇の御使いだぞ」 「いいえ、お気になさらず。蛇塚 羅巳と申します。 この寺院の権禰宜を務めさせて頂いております。 お見知りおきください」 闇が晴れた後、巫女服姿の美しい人間の少女の姿になった、ラミアが礼儀正しく頭を下げる。 「あっ、えっ、もっ、申し訳ありません。失礼しました。」 闇の中で母に着付けを直されたシルビアも、呆然としたまま礼を返した。 「お二人とも、新年おめでとうございます。よろしくお願いいたします」 白い肌と白い髪、赤い瞳の権禰宜は、白い蛇を控えさせながら、新年の挨拶をするのだった。