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運動と暴食の秋
「わー、楽しみ、ここが飯田橋で一番評判の店ですか。どれにしようかな~」 まったく物おじせずに、若い女の子1人でラーメン屋に入る。 ラーメン屋ってのはな、もっと殺伐としてるべきなんだよ。 相席になったテーブルの向かいに座った奴といつ喧嘩が始まってもおかしくない、 刺すか刺されるか、そんな雰囲気がいいんじゃねーか。女子供は……。 黒いワンピースの上に着古した軍服という、最寄りの秋葉原でもあまりいない女子供に、コピペ的フレーズが中断する。 勿論、市ヶ谷にもいないだろう。 刺すか刺されるかの世界からやってきたみたいなブロント少尉の雰囲気に、店にいた客たちがの空気がシーンと静まり返る。 「あれ、ラーメン屋って、もっと騒がしいのかと思っていたけど?」 天真爛漫にあっけらかんという、金色の尻尾が乗っている顔が、やけに整っている、 ぶっちゃけかなりの美少女なのが、より一層違和感を際立てている。 カウンターの真ん中が空いていたので、ブロント少尉は躊躇せずに腰掛ける。 何となく、カウンターが店主と差し向いの勝負になることは解っているようだ。 「マスター、この一番目立つやつを頼む」 カウンターで手を組み、その陰できらーんと目を光らせながら言う。 ついでに口元からよだれがたらーんと垂れる。 「ああ、あんたただ者ではないな……。先に金よこしな」 数十分後、運ばれてきた、巨大ラーメンに、ブロント少尉が歓声を上げる。 「わーすごーい、これが寿司餃子天ぷらに並ぶといわれる、最強料理、ラーメンね!!」 目を、シイタケが入っているのかというぐらいに輝かせて巨大ラーメンに食らいつくブロント少尉。 「あー美味しかった。こんな巨大でおいしいなんて、ラーメンってすごいわね。おなかいっぱい」 十数分後、巨大ラーメンを食べつくして、ストレッチをしながら、言う。 すごいのは、あんたの頭の中と胃袋だ。と周りは思うけど。 「ちょっと、腹ごなしにお城一周しよ」 と続けたので、さらにぎょっとした。 えっ、これから?たぶん、信じられないけど市ヶ谷に帰るんだったら、あと20分ちょっとしかない。 それに、あんなに食べた後で。 皆が固まっているうちに、ブロント少尉は、その場でなんのてらいも無しに羽織っていた軍服とワンピースを脱ぐと、下に着ていた体操着姿になる。 つられるように、その姿を追っていた全員は、ブロント少尉の格好を見て、食べかけのラーメンを吹き出しそうになった。 (なっ、なんでブルマ?深夜の秋葉原じゃないぞ!!) ブロント少尉はブルマ姿でそのまま皇居一周に走り出してしまい、 あとには、前払い金を返し忘れて出てきた店主だけが残された。