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暴食と節制の黒天使

室内のトレーニング室の片隅で、若い女性たちが何やらこそこそ話し合っている。 士官候補生の女性生徒たちだ。 「まったく、あの、ブロントとかいうガキ少尉ってさ、なんか、調子こいてない?」 「そうよね、外国からの交換武官とか言ってるけど、あんな年で少尉なんてありえないわよ。どんな田舎なのよ。よっぽど人がいないのね」 軍人として、士官候補生として採用されたからには、選抜された優秀な女性たちのはず。しかし、まだ若い、それこそ一般社会ならば大学に入ってすぐぐらいの若い娘たちだ。 身内同士で集まったり、誰かを仲間外れにしたりといった、ネガティブな面も、まだ残っている。 「ちょっと、しめてやろうじゃない」 それぞれ優秀なだけに、それこそ特別扱いの、より若い、容姿も際立って目立つブロント少尉にいろいろと思うところがあるらしい。 コンコン 執務室に、ノックの音が響き渡る。 「ブロント少尉、入室許可求めます」 下士官、富士見2等軍曹を含む執務室だ。 日が長い時期なので、窓から差し込む日差しはまだ明るい。 「どうぞ。お入りください」 勤務時間は終わっているので富士見軍曹は多少フランクに答えた。 「どうかされました……、ブハっ!!」 コーヒーを飲みながらブロント少尉に話しかけようとして、2等軍曹はコーヒーを噴出した。 「なっ、なんでですか。その恰好は!!」 ブロント少尉は、今時ほとんどありえない、女子学生用の運動着、 ブルマー姿だった。 「なにって、体操服ですよ。実は士官候補生の皆さんに、夕方のトレーニングに誘われたのです。一緒にジョギングしようって。」 「そっ、それは、結構なことです。しかし、なんでそんな恰好を?」 富士見軍曹のもっともな疑問に。 「ここから秋葉原まで五キロもないですよ。走って買ってきました。女子の運動に一番適している格好だって。士官候補生の皆さんはみな優秀なはずですからね。私も気合を入れないと」 「はっ、はあ。そうですね」 よくわからない正論を言われて、富士見軍曹はあいまいな答えを返すしかない。 何で秋葉原?ふさわしい格好とは?なんで電車じゃない?たぶん往復買い物含めて30分かかっていない?とかの疑問は脇に置いておいた。 「それで、私に御用とは?」 「運動のスペシャリストの富士見2等軍曹にもお付き合い願いたいと思いまして。ちゃんと軍曹の分も買ってきました」 ずずいと、新品のブルマーを突き出してくるブロント少尉。 士官候補生たちは、ブロント少尉が富士見2等軍曹に修正を食らっていたので、ブロント少尉が2等軍曹になついているとは思っていなかったのだ。 富士見2等軍曹は、若く見えるといっても、10代ではない。躊躇していると。 「もしかして、無理でした?」 ブロント少尉の言葉に応じて、何か、ぴきっと、切れる音が聞こえた気がする。 ブロント少 尉は、何か用事があって都合が悪いのかと聞いたのだが。 富士見2等軍曹は、ブロント少尉の、鋭くもかわいらしい不思議な美貌と、白人のように白くて日本人そのもののきめ細かい肌の太ももをみて、最後に突き出されたブルマーを見ると。 「いいわよ!!着てやろうじゃない!!」 「ちょ、ちょっと、なに怒ってるんですか!!」 ブルマーの袋を奪い取った、富士見軍曹に、ブロント少尉は目を白黒させるのだった。 「みんなだらしないわね」 さすがの富士見軍曹も、汗だくになっているが、まだ余裕はある。だが、士官候補生はそうではない。みな、グランドに膝を突き、しゃがみ込んだり息絶え絶えだ。 士官候補生たちは、自分たちで団結してペースを作れば、ブロント少尉を追い込めると思っていたのだが。 富士見2等軍曹が参加したのも予想外なのにくわえて、ブロント少尉のペースがやたらと早かったのだ。軍曹が参加しているのに遅れるわけにはいかない。 その結果ブロント少尉に引っ張られるように、軍曹に追い立てられるような格好になって……。 もちろん候補生ではないブロント少尉は……。 「どうしたんでしょう。皆さん、体調が悪かったのでしょうか?」 と、そこに。 「こちら、ブロント様……で、よろしいでしょうか。ピザの配達に伺いましたが……。あれ、もしかしてアンジェちゃん?」 高校生ぐらいの女の子が、ピザを箱を何個も抱えて、運動場に入ってくる。 「わお!!来ました。あっ、葉月さん。奇遇ですね。」 ピザ配達の女の子とブロント少尉は顔見知り、というか友達だったらしい。 「運動が終わる時間ぐらいにお願いしていたのです。予定通りですね」 ブロント少尉が守衛に話を通していたらしい。この辺は抜け目ない。 「はい、LLサイズ5箱。ちょうど2万円、ネットでお支払い済みです。……、よく食べますね」 あたりを見渡しながら5箱分を保温バックから取り出す、葉月さん。 アンジェことブロント少尉と、小柄な年上の、先生ぽい人以外、全員グランドに突っ伏していて、ピザなど食べれそうにない。 「またこんどね。アンジェちゃん。食べても太らない人っていいな~」 葉月さんは手を軽く振りながら帰っていったのだが。 「士官候補生の皆さん~、自主トレーニングお疲れ様です~。私のおごりですよ~。ピザをたくさん食べましょう」 士官候補生はその呼びかけにピクリともしない。 「あれ、皆さんどうしましたか」 誰も動かないので、近くにいた富士見2等軍曹に話かける。 「軍曹、食べませんか。たくさん食べないと大きくなれ……」 「やかましい!!」 ボス!! 「アウ!!何するんですか!!」 2等軍曹はブロント少尉のブルマのお尻に蹴りを入れる。 「ちょうど良いところに、丸くて柔らかそうなちょうど良い大きさのお尻……、訂正、ボールがありましたので間違えて蹴ってしまいました。ボールに謝罪いたします」 しれっと流して、富士見2等軍曹も、ピザに食らいつくのだった。 「ブロン子ちゃん、今日は良く食べるのね」 「昨日たくさん食べて、たくさん運動したから、お腹すいちゃった。ピザLL4枚も食べちゃったよ」 LLサイズ4枚?若い女性の食べる量ではない。 「そっ、そんなに食べて大丈夫?」 「大丈夫大丈夫。私、朝昼晩と合わせて50キロ走ることにしたから。50キログラムで、50キロメートル走れば、一日1キログラムはやせるんじゃないかな」 (化け物かしら?食べる量減らしたほうが早いような)

さかいきしお

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swingwings
2023年10月01日 11時29分

さかいきしお

2023年10月01日 15時40分

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