thumbnailthumbnail-0thumbnail-1thumbnail-2thumbnail-3thumbnail-4thumbnail-5thumbnail-6thumbnail-7thumbnail-8thumbnail-9

1 / 10

サイの目の祟り

「お兄さん私とちょっと遊ばない?」 冒険者の店で、盗賊風の身なりをした、若い娘が声をかけてくる。 尖った耳が頭の横で揺れて、ふさふさの尻尾がふりふり動いている。 狐の獣人だ。 「ひゅ~、子ぎつねちゃん、何して遊ぶんだ?」 男は口笛を吹きながら答える。 「これなんかどうかしら?」 狐娘が、手を広げて持っていたサイコロを見せながら言う。 「いいねえ!!、しっぽまで毟ってやるぜ!!」 「いやだ~、エッチ!!」 「はーい、また私の勝ち!!」 狐娘は博才があるのか、なかなか男は勝てない それでも、時の運なのか、男に勝ち目が回ってきた 「よーし!!ここで一気にかけるぞ!!」 「あら~、そううまくいくかしら?」 ぴくぴく動く狐耳をつまみながら娘が言う その瞬間、男の手が素早く動き、狐娘のもう片方の手を抑えた。 「あっ!!」 「とうとう、尻尾を出したな!!この女狐!!」 娘の手の中には、もう一組の別のサイコロが握られていた。 男はサイコロを奪い取るとテーブルにたたきつける。 サイコロは真っ二つに割れると、中には鉛が入っていた。 「言い逃れはできんぞ!!番所まで来てもらおう」 取り出した帽子をかぶりながら男が言う。 男は、賭博でいかさまを働く女盗賊を探っていた衛兵だったのだ。 賭博ぐらいに目くじらは立てんが、いかさまはだめだ、ということらしい 「ちっくしょう!!サイの目が悪かったよ!!衛兵相手にいかさましちまうなんて!!」 狐娘は、いままでの可愛らしい子狐の容貌をかなぐり捨てて、ずるがしこくて凶暴な女狐の顔になり罵った 「さあ来い!!尻尾を毟るぐらいじゃすまんからな!!] 衛兵が狐娘を引っ立てようとすると。 「まて……」 扉を開けて入ってきたオークが声をかけた。 屈強に鍛えられた、板金鎧を着たオークの戦士だ。 だが、その容貌はオークにしては整っていて、人間の中に混じってもそこまで違和感はない。 大きくはないが、良く響く低い声で、狐娘や衛兵、その他の客も時が止まった様にオークを見つめる。 「その娘への仕置きは、我に任せてもらおうか……」 オークは、狐娘を渡せ、と言ってきたのだ。 「オークが、獣人を?」 「おっ、おい、オークの旦那よ。あんたらは、けもの女になんか用はないだろ?」 オークの男は、人間やエルフの女と番うことは頻繁にあるが、獣人相手はあまり聞かない。 「そうはいかん。その娘は、我の妹だ……」 一瞬本当に”時”が止まったようだった。 「はっ!?」 「えっ、なんだって!!」 「オークと獣人が兄妹!?」 客の絶叫とともに動き出した”時”だったが。 「今度は私に妹ができたの?いったい何人、同胞(はらから)がいるのかしら!?」 オークに続けて入ってきた、ハーフエルフの言葉に、再度凍り付いた。

さかいきしお

コメント (1)

yuyu
2023/09/22 07:26

さかいきしお

2023/09/22 13:15

890

フォロワー

814

投稿

おすすめ