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蒼穹のフロンティア【湯気の向こうの素顔】
第7機動艦隊旗艦テンペスト―― その格納庫に響いていた金属音と火花は、ようやく静寂へと溶けていった。 長い一日が終わる。 整備班長、ジーナ・クロフォードは工具を置き、誰もいない通路を抜けて、簡素なシャワールームへと足を運ぶ。 蛇口をひねると同時に降り注ぐ温水。 冷えた身体にじんわりと広がる熱が、張り詰めていた神経をほどいていく。 「……はぁ……」 小さく漏れた息。 それは、誰にも見せない彼女の“素の声”だった。 油と金属の匂いに包まれていた一日が、湯気の中でゆっくりと洗い流されていく。 戦場では見せない柔らかな表情。 整備班長としての厳しさも、責任も、今だけは少し遠くへ。 ただの一人の女性として、静かに、自分を取り戻す時間。 しかし、その胸の奥にある想いは変わらない。 ――明日も、必ず全機を送り出す。 ――そして、必ず全員を帰還させる。 湯滴が頬を伝い落ちる中、ジーナはそっと目を閉じる。 この短い安らぎの時間こそが、彼女を再び戦場へと立たせる“力”になるのだから。
