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煙と光と七輪と
舞台幕の隙間から、もうもうと煙が流れ込んできた。 舞台の隅っこでぶすぶす言いながらサンマが焼かれているのだが。 「ふふふ……この闇を切り裂くのはダーク・スールたる拙尼のダークセーバー!」 黒衣に身を包んだシャーリー=クラウンが、蛍光ペンライトを両手に構える。 動きは妙に堂々としていて、残像すら光刃のように見え――いや、やっぱりただの光る棒だ。 ブロント少尉は呆れ顔で相手を見やった。 シャーリーの長身は美女そのものに見えるが、よく見れば肩幅が広い。 さらに意外に身に付いた筋肉、と言っても美女の範囲に収まっているように見えるが 「くらえ! 幸運神の加護とともに、光と闇の二刀流ッ!クロスセーバー」 シャーリーは無駄にキメポーズを取りながら、二本のペンライトを交差させる。 ブロント少尉は深いため息をつき、模擬剣を捨てて跳び上がった。 「……もういいです」 そう呟くと同時に、跳び内回し蹴り――クレセントカッターが炸裂する。 「ぐふっ!?」 蹴り飛ばされ、床に転がるシャーリー。 だがなおも蛍光棒を振り回す姿は、もはや悪の尼僧ではなく、完全に道化そのものだった。 そのとき、舞台裏から甲高い声が響く。 「ちょっとなに煙幕にしてんのよ!! それ今日のごはんでしょ!!」 エプロンドレス姿のチェルキーが乱入し、腰に手を当てて怒りをあらわにする。 サンマの煙とペンライトの光に包まれた舞台は、一気に滑稽なドタバタ劇と化した。
