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王冠の夜
森の木立の中、焚火の明かりがゆらゆらと揺れる。 チェルキーは小さな皮袋を口に運び、火酒をひとくち。ぐっと喉に熱が落ちると、額にじんわり汗がにじんだ。 「……ふぅ。やっぱり火酒は効くね。でも、暑い日はエールもいいなぁ」 そう言って笑った瞬間、プーにゃんが首をかしげる。 「えーる?あの泡立つやつ?見たことない~」 すると、ブロント少尉が得意げにリュックをがさごそ漁りはじめた。 「それなら……ちょうどいいのがあるんだ」 彼女が取り出したのは、ガラス瓶に詰められた黄金色の液体。金属の王冠が光を反射し、チェルキーとプーにゃんは目を丸くする。 「なっ、なにそれ!?瓶入り?しかもコルクじゃなくて……金属で閉じてある!」 「きらきらだー!すごいのー!」 少尉は胸を張り、十徳ナイフを構える。 「普通のビールだよ。こうやって……」 プシュッ! 王冠が宙を舞い、泡が一気に吹き出す。 「わ、わわっ!?こんなに泡立つの!?」 「おおー!スパークするお酒だー!」 二人が驚きと興奮で声を上げたその時――。 「――お子様はこっち!」 森の影から富士見軍曹が颯爽と現れる。 次の瞬間、少尉の前のグラスが、何事もなかったかのようにコーラにすり替わっていた。 瓶のラベルには見慣れぬ赤いマーク、そしてしっかりと残る王冠。 「軍曹っ!? い、いつの間に……」 「規律は規律です」 小柄な軍曹は涼しい顔で言い放ち、瓶の王冠を指でくるりと弄んだ。 だが場の空気は、緊張よりもどこか愉快なものに変わっていた。 焚火の明かりの下、テーブルにはビールとコーラの瓶が並び、王冠がいくつも転がっている。 「ま、せっかくならみんなで」 チェルキーが笑いながら、ビールジョッキを高く掲げる。 「ぷーにゃん、こっちは甘いシュワシュワだよ~」 「やったー!こーら好きー!」 少尉は頬を少し赤らめながらも、コーラ瓶を掲げ直した。 軍曹も「仕方ないですね」といいつつ、泡立つビールを受け取る。 そして、四人は焚火の周りで円卓を囲み、声をそろえた。 「――かんぱーい!」 森に響く乾杯の声と、グラスの澄んだ音。 泡立つビールも、甘いコーラも、この夜の仲間たちを祝福するように輝いていた。
