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『玖宝輪の封印、解除(ただしポップ)』

古びた石柱とヒビ割れた床。神聖な祭壇らしき台座の上には、威厳に満ちた多面体のキューブが置かれていた。 朱と金の彩色に、四方八方へ光を放つような宝玉。明らかに只者ではない造形。 チェルキーはその前でしゃがみ込み、目を細めて唸った。 「うん、こいつはただの6面体でもダイスでもないね……。 さしずめ、玖宝輪って言ったところか。 異世界級だ。 見たことのない合金に、宝玉の配列も五十四面……なにより──」 チェルキーはカチ、カチと何かを回しながら続けた。 「回る。」 「そのぐらい私でも分かるっての」とリリスが腕を組んで背後から覗き込む。 銀髪のロングが淡く光に反射して、祭壇の石造と違和感なく馴染んでいた。 「でも、こいつだけ浮いてるのよ。周囲の装飾と比べても明らかに作りが違う。なにかしら、これは……新手の封印装置?」 「……どこか、嘘くせぇ」とチャーリーがぼそりと呟いた。 神父と盗賊を足して割ってもなお信用できなそうな中年男。眼鏡の奥の視線はどこかしら胡散臭い。 そのとき── 「おーい! あっ、いたいた! ちょっと待って、それレジカウンターの上にあったヤツでしょ?」 声の方を振り向くと、やけに場違いな金髪の少女が一人、紙埃を払いながら歩いてきた。 詰襟の黒い軍服にプリーツミニスカート。 足取りは軽いが、姿勢と視線はしっかりと訓練された軍人のそれだった。 ブロント少尉である。 彼女は周囲を一瞥し、そこに建っていたボロボロの等身大キャラポップを手に取って立て直した。 派手な衣装を着た長耳のエルフが剣を掲げている――それは明らかに販促物だった。 「いやー、ここ、秋葉原にあったオタクショップだよ。 閉店したところが異世界転移してきたやつかな。 私が小さいころ聞いたことがあるよ。 やけにイベントとかに力入れて、内装とかもそれっぽくして頑張ってたんだけど。 やりすぎて潰れたって。 その後なぜか、店が丸ごと一晩で消えたとか。」 「……あ?」 「……なに?」 「そのキューブも、このポップも、みんなあのネットゲーのプロモ用の演出セットだよ。 あったでしょ?  なんか、六面揃えると“知識と技術の封印が解ける”っていう…それっぽいやつ。  リアルイベントで使われてたの、たぶんこれ。」 沈黙。 「………………は?」 リリスの顔が引きつる。 「おい、嘘だろ……」とチャーリーが小声で天を仰ぐ。 チェルキーが動かしていた玖宝輪は「カチカチ」と乾いた音を立て、ゆっくりと一面が揃った。 ──ぷしゅう、とどこからかスモークが噴き出し、祭壇の裏からLEDのような光が「キューブヲ…カイホウシマシタ」と不自然な機械音声を発した。 「……全部演出じゃないの!!」チェルキーが叫んだ。 異世界から来た三人は、あまりにしょうもない真実に呆れ果て、レジカウンターの前で立ち尽くす。 ブロント少尉は紙ポップを大事そうに立て直しながら言った。 「懐かしいねぇ、このゲーム。尊大で謙虚なエルフ様が出てくるヤツ。 今じゃバージョン7.5で別世界編やってるんだよ、知ってた?」 「知らねぇよ!!」 三人のユニゾンが、崩れかけた天井に木霊した。

さかいきしお
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コメント (16)

W

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2025/08/02 03:26

尊大で謙虚なエルフ様…まさかジョブはナイトで黄金の鉄の塊でできてたりしませんよね?

2025/08/01 13:56

どうだったかな?  自分からすすんで前衛に出るから、フロントさん、と呼ばれてたと思うよ

2025/08/01 14:21

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