1 / 3
翼への憧れはアイスと共に
「士官候補生諸君!」 滾るような気合と共に、風を切るような清廉で鋭い声が空気を裂く。 「諸君らがどの軍に配置されるかは未定だが、いずれにせよ――各軍種での連携は非常に重要だッ!」 整列した候補生たちに向けて、ブロント少尉の声が響き渡る。 「疑問点や質問、その他純粋な興味でもよい。この機会を逃がさぬように! ただし、空軍の皆様にご迷惑をおかけしないように心得よ!! わかれ!!」 「ハッ!」 その一糸乱れぬ反応に、視察対応中の空軍スタッフたちは思わず背筋を伸ばす。 そして、その姿を後方から見守っていた基地司令も、少しだけ口元を緩めた。 「少尉は飛行機や空軍に、どんな思い入れがあるのですかな?」 司令がやや和やかな口調で尋ねたとき、ブロント少尉は一瞬だけ視線を遠くへ向けた。 「――包囲され、全滅しかけた時……」 声色が、わずかに低くなる。 「上空を割って、空軍――もちろん、自衛軍ではなかったですが――が来てくれたんです。敵陣を爆撃して、避難ルートを開いてくれました。あの時、部下と隊長の命を……何度も救ってもらいました」 司令は言葉を挟まず、黙って頷く。 「……それ以来ですね。空を飛ぶ兵たちを、まるで神の使いのように見てます」 そして、不意に笑みが戻る。 「そういえば、海軍のパイロットさんを救助したこともあります。海に落ちてたのを、引き上げて、怪我してるのを抱えて逃げて――」 「ふむ。それはご苦労だった」 「隊に帰ったら、体重と同じ重さのアイスクリームを“部隊へのお礼”として送ってくれました」 「……それは……なかなか……粋な話だな」 司令は思わず小さく笑った。