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魔法の鉄蜘蛛

「シルビア准導師!!おるかの!!」 シルビアの研究室の扉を開けて、スケベジジイ、もとい一応この賢者の学院の最高導師が入ってくる。 「なんですか?オールドスレイマン?騒がしいですね」 シルビアは、手にしていた何かの書籍、やけに写実的な絵、おそらく魔道写真が多用されている本を片手に、 じろりと闖入者を睨む。 「発掘物の調査を頼みたい!!」 幼く見えるが、冷徹なハーフエルフの美(少)女の一瞥も何のその、最高導師は息せき切ってまくしたてる。 「助平な本の解読ならごめん被ります」 シルビアが手にしている書籍も発掘物なのだが。 美麗なカラー写真を多用した、若い女性向けの本だったらしい。 「まったく、えり好みはだめじゃぞ」 シルビアが開いているページが、それこそ若い女性むけの恋愛物らしき、絵を多用した記事なのを盗み見て、好色な笑いを浮かべるエロジジイ。 だが、そこで、オールドスレイマンは、鼻の下を戻していう。 「軍からの要請ぢゃ。断れんぞ」 めったになスケベジジイの厳しい顔に、シルビアは漫画雑誌を閉じて向き直る。 「遺跡で魔動機が発見された。まだ生きているらしいぞ」 「こっ、これは!!」 巨大な、それこそ賢者の学院の体術教練棟が入るぐらいの地下空間に、鎮座しているそれを見て、シルビアは驚きの声を上げる。 そこにいたのは、巨大な鉄でできた蜘蛛、のように見える、ゴーレムだった。 「シルビア准導師。これは、力ある魔術師の方でないとわかりません」 側にいた、軍の技術者らしき男が声をかける。 「わかりました。見てみましょう」 遺跡に設えられた、椅子に座ると、呼応するように、目の前の机の光がともる。 その魔法光に似た光に、シルビアは意味を読み取った。 【TARANTULA-KR Typ-08: Magia Machina Armata - Multipeda】 「……《多脚機動魔導戦機》……"タランチュラ・クラス、タイプ08"……?」 彼女は眉をひそめながら、さらに続く説明文を読み取る。 【Primär Armamenta: Magna Arc Cannona (Integrata); Secunda: Arcus Magna Lancea, Torsio Claw】 「……《主兵装・大魔力砲》……《副兵装・雷槍》《機構爪》……」 【Exclusivita: Operatia Magus. Standardia: Operatia Soldá】 「……《専用機構・魔術師運用》……標準機能では……《兵士運用》も可?」 (つまり、本来は魔術師が搭乗することで最大限の性能を発揮するけど、一般の訓練された兵士でも運用可能な設計……?) シルビアの脳裏に、自国の魔導機運用体系が浮かぶ。現代の魔導機技術は、基本的に魔術師の補助として開発されているが、ここに記されているタランチュラ級は、兵士でも運用できるという点で異質だった。 「でも……本当にそんな都合のいいものなのかしら?」 シルビアの指先が、小さなルーンをなぞる。これは……探知魔法の強化紋様?それに、内部には対狙撃・対暗殺者向けの魔法障壁発生装置まで組み込まれている。 「……これ、魔術の心得がないとまともに動かせないわね。」 魔術師の支援なしに兵士が運用できると言うには、あまりにも繊細すぎる制御系統。仮に魔法の適性がない兵士が乗ったとしても、まともな運用は難しい。 むしろ、魔術に精通した者こそが最大限に引き出せるように設計されている。 「ふふ……なるほどね。」 全ての点が繋がった。これは、魔術師たちが 自分たちを守るために作った魔道鎧 だったのだ。 「軍に資金を出させ、魔術師のための鎧を作る……随分としたたかなやり方じゃない。」 シルビアの言葉に反応するように、魔法の光が明滅した。

さかいきしお

コメント (8)

Kinnoya
2025/03/04 13:22
ガボドゲ
2025/03/04 12:38
白雀(White sparrow)

2本や4本足よりはバランスを保てて安定しそうな構造ですね

2025/03/03 21:44
早渚 凪

蜘蛛型兵器はキラーマシン感あってすごく好きです。でも構造上、足関節が弱点だったりしますよね

2025/03/03 14:47
Jutaro009
2025/03/03 14:42
五月雨

わたくしが一番、蜘蛛を動かせるのですわ!

2025/03/03 14:30
えどちん
2025/03/03 14:25
もみ
2025/03/03 14:16

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