【モーニングセット】ヴァニラのモーニングセット

「こらー！そこの女子！何カメラ構えてんの、散れ散れーい！」 私が注意すると、慌てて逃げていく女生徒。全く、朝っぱらから油断も隙も無い。 ここはコネサンス魔法学園の女子寮、その中庭だ。寮生の憩いの場の一つとして開放されている。もちろん、男子禁制だ。 今はそこで、ヴァニラが朝の運動をしている。一緒に暮らしてて分かったが、バニートラップのメスは体を動かして魅力的なボディを作るのが好き・・・というより生態らしい。 多分、本来は男を誘惑して寝床に誘うための行動なんだろう。呪いの力が失われ、男を人参に出来なくなってもその生態は失われないみたいだ。 そこまではいい。運動は健康的な習慣だし、何なら私もお肉がたるんだりしないように付き合った方がいいのかもしれない。だけどだ。 「ヒマリー、また叫び声聞こえたけど？なに、カメコ？」 「うん。自分がされたらどう思うか考えろって言ってるんだけど、中々減らなくてね」 「いやアレはヴァニラにも責任あんでしょ。ヒマリが言っても直さないってのはもう相当なこだわりだと思うけどね」 ヴァニラは、運動着として『上半身裸＋ブルマ』というとんでもねぇ服装で朝の運動をする。首にかけたタオルでかろうじて乳を隠しているだけで、ちょっと動いたら見えそう。 そのせいで、女子の中には運動中のヴァニラの姿を写真に収めて、それをこっそり男子に売る事で小遣い稼ぎをしようとしてる奴がいるのだ。 もちろん、過去に女湯や女子トイレで同じ事をしようとした女子もいるけど、あっちは閉鎖空間な上に警戒してる子も多いから成功率が低いらしい。 その点、中庭であんな格好をしているヴァニラは格好のターゲット。盗撮女子がヴァニラを隠し撮りしに来るのは割とあるのだ。 茂みや木の上に潜んでヴァニラを盗撮しようとする女子を妨害するのは私の役目。3人くらいいる盗撮犯は、いつも同じ顔ぶれなんだけどね。 「もういっそ盗撮犯を退学に追い込みたいくらいなんだけど、こっちもヴァニラがあんな格好してる手前強く出られないんだよね」 「それこそヒマリの得意な幻覚魔法でさ、ヴァニラが服着てるみたいに見せかける事とかできないの？」 「出来るけどさぁ、それすごい魔力消耗するんだよね。見た目を変えるのは服に幻覚魔法織り込めれば楽なんだけど、そもそもその服が無いわけだから大変で」 「そんな大変なの？幻覚魔法詳しくないからよく分かんないんだけど」 「例えるならそうだねー、燃やすものなしで焚き火をするようなもんだから」 「ずっと炎魔法出してなきゃじゃんソレ。そりゃ大変だわ。まあ頑張れ、お姉ちゃん」 それだけ言うと私の友達は去って行った。あーあ、もうどうすりゃいいんだ・・・。いっそヴァニラが気に入るような新しい運動着作る方が楽かな。 「ふぅ、『 漆黒の悪魔の軍勢（ローチテンペスト） 』っと」 私は戻ってきた盗撮犯に『Gの群れが飛び掛かって来る幻覚を見せる魔法』をかけつつ、溜息をついた。