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カーネーションを食べるエルフ
母の日の悩み 「ねえ、グロム。母の日のプレゼントって何にすればいいかな?」 カーネリアが唐突に尋ねると、グロムは眉をひそめた。 「お前、急に真面目な話するなよ。気持ち悪いだろ」 「何!?母さんに何か贈りたいだけよ!失礼ね!」 「はいはい、わかったよ。まあ、定番はカーネーションだな。花屋に行けばすぐ手に入る」 「それじゃ普通すぎるわ。私、もっとすごいのがいいの!」 グロムはため息をつきつつ、真面目に答えた。 「なら、母さんの好きなものを考えろよ。例えば、趣味に関連したものとか」 「母さんは編み物が好きよ。でも、私、編み物なんて無理だし…」 「じゃあ、上質な毛糸はどうだ?市場でいいやつが買えるぞ。母さんの好きな色を選べば完璧だ」 「へえ、悪くないわね。母さん、青が好きだから、青い毛糸にするわ!」 「あと、手紙を添えると喜ぶぞ。感謝の気持ちを書けよ」 「手紙!?私、文章なんて書けないわよ!」 「下手でもいいんだよ。気持ちが大事だろ」 カーネリアは少し考え込んでから、ニヤリと笑った。 「まあ、私なら母さんを感動させられるわ。だって、私って天才的だから」 「冗談、顔だけにしろよ」 グロムが呆れ顔で突っ込むと、カーネリアはムッとした。 「顔だけじゃないわよ!中身も最高なんだから!」 「ねえ、ところでさ、ドワーフのメスっているの?」 カーネリアが突然話題を変えると、グロムは目を丸くした。 「メスって…動物みたいに言うなよ…。普通に女性だろ!」 「だって、ドワーフってみんな髭だらけじゃない?女の人もそうなの?」 グロムは少しムッとしつつも、説明を始めた。 「まあ、ファンタジーの世界じゃよくある話だ。ドワーフの女性は頑丈で、髭が生えてることも多い。男と見分けがつかないなんて設定もあるくらいだ」 「えー!?それって変じゃない?」 「変でもなんでもねえよ。それがドワーフだ。ちなみに、俺の母さんも髭があるけど、世界一の母さんだぞ」 「へえ…。じゃあ、女の人も戦士になったりするの?」 「ああ、ドワーフ社会じゃ男女の違いはあんまりない。女性も戦士や職人としてバリバリ活躍するさ」 「ふーん、面白いわね。私もエルフの女戦士だけど、ドワーフの女戦士に会ってみたいわ」 「機会があればな。で、プレゼントの話に戻るけど、毛糸だけでいいのか?」 「うーん、母さんが好きなケーキも作ろうかしら。私、ケーキ作るの得意よ!」 「へえ、やるじゃん。材料はどうすんだ?」 「グロム、手伝ってくれない?材料集め、面倒なのよ」 「はあ!?俺はお前の召使いじゃねえぞ!」 「いいじゃない、ちょっとだけよ!友情だよ。恋と一緒だな」 グロムは渋々うなずいた。 「友情ねえ…。まあ、仕方ねえか」 材料集めとプレゼント 二人は森で材料集めに奔走した。カーネリアは木の実を摘み、グロムは魚を捕まえた。 「魚!?ケーキに魚入れるの!?」 グロムが驚くと、カーネリアは笑った。 「違うわよ!母さんの夕食用よ。ケーキはデザートに決まってるじゃない!」 「なるほどな。気が利いてるじゃねえか」 「でしょ?私、天才的だもの」 「はいはい、天才様だな」 母の日当日、カーネリアは青い毛糸、手作りケーキ、手紙を母に贈った。母は大喜びで抱きついてきた。 「カーネリア、ありがとう!最高の娘よ!」 「母さん、いつもありがとうね。私って親孝行でしょ?」 一方、グロムは母に酒を贈り、頭を撫でられた。 「お前、いい息子だな」 「母さんが一番だよ」 森の丘に、カーネーションが一面に咲き誇る。赤い花々は絨毯のように広がり、そよ風に揺れて甘い香りを放つ。空は青く澄み渡り、太陽の光が花々を照らし、まるで宝石の輝きを宿していた。カーネリアとグロムは丘に立ち、その美景を見つめる。彼女の赤髪は花と溶け合い、グロムの瞳には静かな優しさが宿る。言葉はない。ただ、花の香りと共に時間が流れ、まるで永遠がそこに息づいているかのようだ。太陽が空高く輝き、カーネーションは希望の光を浴びて一層鮮やかに。二人を包むその情景は、母の愛のように温かく、未来への絆を象徴していた。