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中学校での爆弾騒ぎ
鮫島「やっぱ女は巨乳に限るだろ。桃宮のとかさ。めっちゃ揉みたいんだけどアレ」 寺野「おい桃宮の胸を出してくるの反則だろ。同年代であれに勝てる女子いねーよ」 お昼休みの中学校。教室の入り口で猥談に花を咲かせる男子達。そんな男子達に近寄り、下から睨み上げる小柄な女子が一人。 橙臣「おい鮫島、寺野。アンタたち、教室の入り口でエロトークしないでくれる?邪魔なんだけど」 橙臣恋織である。鮫島と寺野と呼ばれた二人の男子は、その視線に言葉以上の殺気を感じて少し怯んだ。 鮫島「な、何だよ橙臣。そんな睨むなよ。あ、もしかして僻みか?小さいもんなお前」 橙臣「女子総会にかけられたいの?」 寺野「すまん勘弁して」 橙臣に軽く謝罪して、鮫島と寺野は塞いでいた入り口からどいて道を開ける。それと同時だった。 『ボバァン!!!』 橙臣「きゃあ!?」 突然校舎を震わせる爆音。驚いた橙臣は思わず近くにいた鮫島の腕に縋り付く。他の教室に残っていた生徒たちも、雑談をやめて不安そうにざわめき始めた。やがて、校内各所のスピーカーから放送音声が流れだす。 「えー、全校生徒は体育館に集合してください。これは避難訓練ではありません。落ち着いて、廊下を走らないように体育館まで移動するようにしましょう。繰り返します・・・」 避難訓練ではないという言葉に、不安の声は大きくなる。この教室では状況を理解しようとするあまり、体育館への移動を始めない生徒の方が多かった。そんな教室の前を、桃宮弥美が通りかかって声をかけていく。 桃宮「みんな体育館行こー?なんかね、プールで爆発事故が起きたんだって。一応消防と警察呼ぶらしいから、邪魔にならないように体育館集合なんだってさー」 その言葉を聞いて、ようやく移動を開始する生徒たち。橙臣・鮫島・寺野たちの前を教室に残っていた生徒たちが通り過ぎて出ていく。 桃宮「・・・恋織ちゃん、それじゃ鮫島君動けないと思うなー?」 橙臣「えっ?」 言われて橙臣は、自分が両腕で鮫島の腕を胸に抱きしめていた事に気付いた。慌てて手を離し、弁明を始める。 橙臣「いやっ、あの!これはつい近くにあったからしがみついただけで、そういうのじゃないから!」 桃宮「ん~?そういうのってな~に~?」 橙臣「弥美うっさい!体育館でしょ、早く行こ!」 顔を赤らめ、ずかずかと早足で教室を出ていく橙臣。その後を桃宮が悪戯っぽい笑みを浮かべながら着いて行き、教室には鮫島と寺野が残された。 寺野「さっきの橙臣、『きゃあ』とか悲鳴上げてたな。気が強そうに見えて意外とビビりなんじゃねあいつ。・・・まあいいか、鮫島、俺らもとりあえず体育館行こうぜ」 鮫島「寺野」 妙にきっぱりした口調で呼ばれた寺野は、「ん?」と首を傾げる。そんな寺野に対して、鮫島はさっきまで橙臣がしがみついていた腕をさすりつつ、断固として言い放った。 鮫島「俺、今日から貧乳派になるわ」 寺野「どうした急に」 この後、プールの一件は機械の誤作動だと生徒達には伝えられた。しかしこれは騒ぎを大きくしないための方便だった。実際は爆発物が屋外プールの水中で爆発したのであり、警察は公園で起きた爆発騒ぎと関連付けて捜査を始める。その結果妙な事が判明した。 この爆弾は防水仕様になっておらず、水中に仕掛けてあったとは考えられないのである。まるで誰かが、別の場所にあった爆弾を爆発寸前にプールに投げ込んだかのような状況。しかしプールは時期の問題もあってフェンスや入り口は施錠されており、重量もある爆弾を水中に投げ込むにはそれこそ空でも飛んで爆弾を運んでこないと不可能なのだ。残骸からの指紋検出もできず、この不思議な状況の解決はついぞ警察には出来なかったという。