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テロリンと紅について(後編)

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2025年03月09日 15時01分
使用モデル名:animagine-xl-3.0
対象年齢:全年齢
スタイル:イラスト
デイリー入賞 121

「紅という男のルーツが関係してるんだろうねェ。奴は20年前、生後間もない赤子の頃に中国マフィア『龍立(ロンリー)』の本家の邸宅前に捨てられていたそうだ。捨てた人間は金持ちの家だと思って捨てたのかも知れんし、マフィアなら赤子を消してくれると思ったのかも知れない。親の意図はまあともかく、赤子を拾ったマフィアの首領は血も涙もない冷血漢だった。本来なら殺してポイだったのだろうけど、たまたま思いついた。『物心つく前から殺しの技術を叩き込み続ければ、優秀で従順な殺し屋が手に入るかもしれん』とね。そして部下に命じ、育てさせた」 それは幸運だったのか、不幸だったのか・・・。 「人殺しの道具をおもちゃ代わりにして、まともな道徳も教えられなかった。目に映る人間は全てならず者。人を殺す事が当たり前のように仕込まれた彼がどうなったか。・・・結果として、紅は2歳の頃に最初の世話係の喉をナイフで裂いて殺してしまったそうだ。物心つく前に人殺しをした紅を見て、首領は満足げに口角を上げたという」 「そんな・・・誰か、紅に正しい常識を教えてくれる人はいなかったんですの?」 晶さんがショックを受けたように漏らします。江楠さんはゆっくりと首を横に振りました。 「残念ながら、首領はこの後も敵対者や裏切者を拘束しては、紅の練習台として与えていたようだ。そうして奴は殺しのエキスパートとして大人になっていったのさ。しかし、龍立と紅の関係は2年前、紅が18歳の時に終わる事になる。龍立が潰されたのさ。私の弟によってね」 「え」 なんで中国マフィアが江楠さんの弟に潰されるなんて事が起きるんだ?疑問に思った私の視線に気付いたのか、江楠さんは補足を入れてきます。 「龍立は武器商人のような事もしていてね。日本に拠点を作ろうと貨物船で関西のとある港に乗り付けたんだよ。しかし彼らにとって最悪な事に、そこは私の地元だった。当然、情報を事前に知っていた私は弟率いる江楠組に連絡済み。港に配備された江楠組と龍立はかち合い、夜中の港は熾烈な武力闘争の現場となったって訳さ。ちなみに警察には私が事前に手を回していたので、抗争中に介入される心配無く思うさま暴れられるようにしておいた。最終的に龍立は首領含めた大多数が死亡し、中国へ撤退せざるを得なくなった。ウチの若い衆にも被害は出たが、明らかにこちらの勝利と言って良かったねェ。ただ、貨物船に一緒に乗っていたはずの紅は一度も港で目撃されなかったそうだ。私が思うに、奴なりに何かを嗅ぎつけたのか直前で小型艇で貨物船を離れたんだろう。次に紅が姿を現した時にはテロリンのエージェントとなっていたから、このタイミングかこれより少し前にテロリンに加入したと考えられるねェ」 ・・・だとすると、紅はテロリン加入から2年で幹部に上り詰めている事になります。一体何人の屍を築いてその地位に至ったのか、想像したくもありません。 「紅は身体能力も精神性も、まさに殺人マシーンと言っていい怪物だ。もし出会ったら絶対に逃げる事だねェ。今この場にいる中で万一にでも勝負になりそうなのは桜一文字サンくらいだろう。しかし戦うのは可能な限り避ける事だ。奴の最大の武器は、ナイフでも銃でもなく『爆弾』。それも普通の爆弾じゃない。小型でありながら、爆発の規模が大きく、なおかつ紅の持つ『ライター型起爆装置』でいつでも任意に爆破可能ときている。フリント式ライターのような見た目なんだが、回転式ヤスリがダイヤルになっていて、爆破したい番号に合わせてから蓋を閉じると起爆信号が発信される仕組みになっているようだ。奴が戦闘中にライターをいじり出したら、それは奴の爆破可能な範囲に踏み込んでしまっている可能性が高いからねェ、次の瞬間には吹っ飛ばされているかも知れないぞ」 あまりにも危険人物過ぎる。江楠さんは一枚の写真をテーブルに置きました。 「こいつが紅だ。いいかい、見かけたら絶対に逃げるように。安全なところまで離れたら、私に連絡を入れて居場所を教えてくれ」 中性的な容姿の男性、というのが第一印象でした。短く整えた黒髪は柔らかそうで、細められた目は理知的な光をたたえています。花屋で花束を購入しているその姿は、とてもテロリストとは思えないような線の細さをした美少年で、普通に出会って話しかけられたら何の警戒も無く応じてしまいそうです。 「ここで買った花束に奴は爆弾を仕込んだんだよ。そして花束爆弾を追悼式典の献花台に置いて行き、頃合いをみて爆破した。物を置いて行っても怪しまれず、大勢が近くに来る状況だからね。数十人が吹き飛んだ」 そんな非情な事が出来るのはもう人間じゃないと思います。この男は江楠さんが自虐的に言う“悪魔”とは違う、本物の悪魔だ。 「・・・お話は分かりましたわ。江楠さん、それをわたくしたちに知らせたのは知人だからという訳ではありませんわよね?」 「まあねェ。金剛院サンのお屋敷ともなれば、奴がターゲットにする可能性も高い。金剛院グループの次期当主が爆殺されたなんてなったら、経済面での影響は極めて大きいだろう。だから特に気を付けなさいという警告だねェ。それと、有事の際には金剛院グループの力を借りたいという打算もある。お父上にもよろしく伝えておいてくれ」 「承知しました。少し離席しますわ。桜一文字、お父様にも連絡しましょう。お供しなさい」 「はい、お嬢様」 二人が席を立って部屋を出ていきます。今度は江楠さんは私たちに向き直りました。 「さて、君たちには君たちでやって欲しい事がある」 「えっ、私たちに?」 「お兄も私も、そんな大した事はできませんけど・・・」 私や玄葉には、晶さんたちのようなコネクションとか無いし。 「他でもない、幽魅君についてだよ。彼女を認識できるのは君たち二人だけなんだろ?」 「ああ、そうですね。もしかして、幽魅に紅を探らせろって話ですか?」 宿城の時の事を思い出して聞きましたが、江楠さんは首を横に振ります。 「違う、全く逆だ。絶対に幽魅君と紅を出会わせないでくれ。可能な限り、幽魅君の居場所を把握しておいて紅を避けるんだ。できればインドア派の玄葉君が四六時中幽魅君と行動を共にしてくれれば一番なんだが」 「出会わせない?どうして」 「聞かない方が良い」 江楠さんは断固とした口調で言い放ちました。何か理由があるのでしょう。探りを入れると危険なのは良く分かっているので、私と玄葉は頷きました。 「頼んだよ。君たちにしかできない事なんだからねェ」 ・・・一体、私たちの町はどうなってしまうのでしょう。言い知れぬ不安が全身を支配していくのを感じていました。

コメント (8)

Jutaro009
2025/03/10 13:28

早渚 凪

2025/03/10 17:23

水戸ねばる
2025/03/10 13:26

早渚 凪

2025/03/10 17:23

thi

幽魅さんの過去の謎がさらに深まるお話しでした

2025/03/10 12:49

早渚 凪

幽魅がなぜ紅の事を知っていたのか、なぜシリアに殺されたのか。その辺りはもうちょっとすると描写する予定です

2025/03/10 17:22

五月雨
2025/03/10 11:16

早渚 凪

2025/03/10 17:22

サントリナ
2025/03/10 03:02

早渚 凪

2025/03/10 17:22

白雀(White sparrow)
2025/03/10 02:48

早渚 凪

2025/03/10 17:21

もみ
2025/03/09 20:21

早渚 凪

2025/03/10 17:21

みやび
2025/03/09 15:44

早渚 凪

2025/03/10 17:21

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2024年7月よりAIイラスト生成を始めた初心者です。 全年齢~R15を中心に投稿します。現在はサイト内生成のみでイラスト生成を行っています。 ストーリー性重視派のため、キャプションが偏執的かと思いますがご容赦願います。

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