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ひとりで見るには満ちすぎて/スマホ壁紙アーカイブ
【ひとりで見るには満ちすぎて】 湯呑みを片づけようとして、 障子の隙間に月を見つけた。 少しだけのつもりで戸を開けると、 湖の向こうまで明るかった。 昼間は気にも留めなかった対岸の家が、 水面に細い灯りを落としている。 隣の部屋から、 布団を敷く音がした。 「もう休みますか」 返事をしかけて、 私は空いた隣を見た。 いつもなら、 呼ばなくても先に出ていた人。 袖口に夜風が入り、 手にした湯呑みがすっかり冷えていた。 「もうひとつ、お茶をいただけますか」 宿の人は何も尋ねず、 盆にふたつ並べてくれた。 縁側に腰を下ろし、 片方を少し離して置く。 月の道が揺れるたび、 隣で誰かが身じろぎしたように見えた。

