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周防桃子、呼ばないと決めた名前――「お兄ちゃんはひとりだけ」と拒んだ元子役が、高級ソープでその名を叫ぶ
「お兄ちゃんって呼べ? ……やだ。それは、ひとりだけの呼び方だもん」 バスタオル一枚で正座したまま、周防桃子は男を見上げて言った。十一歳にして映画に何本も出た元子役スター。大人と対等に話すための踏み台は、入口で取り上げられている。両親が昔サインした契約書が、まだ生きていた。祖母には言えない。一晩だけのソープ嬢。仕事なら、やる。プロだから。 高級ソープの黒いタイルの個室で、タオルを取られる。泡立てたスポンジで太った男の背中を洗い、素肌で、小さな胸を押し当て、ローションで身体を滑らせる。台詞も段取りも一度で覚えるのが、元子役の特技だった。覚えたくもないことまで、一度で覚えてしまう。 「呼び方ひとつで帰してやるのに。強情だな」
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