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シン・赤ずきんちゃん(祖母篇)
「こんにちは、お祖母ちゃん。差し入れ持ってきたよ」 「おや、マリーじゃないかい。元気そうだね。いつも有難うよ」 奇妙な形で出会った、赤頭巾の少女と旅中の若者の二人は、森の中に佇む小さな家を訪れた。 そしてそこには、赤頭巾の少女が祖母と呼ぶ、黒いローブの女性が居た。 だがその姿は、少女の祖母というにはあまりのも若々しく、少女と一緒に訪れた若い旅人は、少し困惑しているようだった。 そして女性は、その若者を一瞥したあと、少女に問いかける。 「この小童は誰だい?」 「ああ、このお兄ちゃんはね、旅の途中でこの森に迷い込んじゃって、私が道案内してるの」 はじめまして。と女性に自己紹介すると、ふぅんという表情で、上から下まで値踏みするかのような視線で若者を見つめた。 「それは災難だったね。まぁこれも何かの縁だ。お茶でも飲んでゆっくりするといい」 そういって女性は奥に入っていった。 若者が部屋の中を見渡すと、おびただしいほどの容器に入った薬品や見た事のない薬草等が並んでいた。 もしや?と思っていると、少女が 「驚いた?お祖母ちゃんは錬金術師で色々研究してるの。あの姿も術のおかげよ。私も色々教わったの」 道理で・・・と若者は色々な意味で納得したようだった。 暫くして、奥から女性がポットとカップを持ってきた。 香草や薬草を煎じたというそのお茶は、澄んだ香りとほのかな苦みがあり、今まで味わったことが無い風味で美味だった。 若者がお茶を飲んでいると、目の前に足を組んだローブの女性が座っている。 確かに、物言いは年相応の老婆の口調だが、その外見は異質なものだった。 美しいプラチナの髪に、衰えを感じさせない豊かな身体。そしてそれを包む黒いローブは体のラインを強調させ、スリットから見える太腿が一層艶めかしく見える。 そんな若者の視線に気づき、女性が微笑むと、見透かされたような気がしたのか、若者は慌てて視線を外した。 「おや、もうこんな時間かい」 柱にある時計を見て女性が言った。 「マリー、森も暗くなるから、今日はもうお帰り。この小童は、儂が明日にでも案内しよう」 「うん、わかった、お祖母ちゃん。あとはよろしくね。じゃあね、お兄ちゃん。元気でね」 まるで、あんな情事があったことを忘れているかのように別れを告げ、赤頭巾の少女は玄関から去っていった。 二人っきりになった部屋の中が静寂に包まれる。だが程なくして、女性が若者に問いかける。 「どうだったい、あの子の抱き心地は?」 若者が思いがけない質問に困惑していると、女性はにこりと笑い 「隠さんでもよい。ただ、あの子がここに連れてくるなんてよっぽどの事じゃよ。相当お主の事が気に入ったようだね。 ま・・・言ってみれば、お主も『差し入れ』の一つということじゃよ」 何を言って?と思っていると、やがて昼間に赤頭巾の子に盛られた薬の症状のように、体が段々と火照っていくのが解った。 「効いてきたね。先ほどのお茶に混ぜてもらったよ。心配しなさんな、あの子の薬とは違って、儂のは軽いが持続性が長いヤツじゃ。 しかも代謝を促進するという優れものでな。・・・どういう意味かわかるじゃろう?」 そういうと、女性は若者の手を取り、隣部屋にある寝室に、誘うかのように導く。 寝室の中にお香が焚かれているのか、その不思議な香りを嗅ぐだけで、一層気分が高揚していく。 女性はくるりと若者の眼前に立ち、ローブの腰紐を解き、下着姿でベッドに横たわる。 まるで手練れの娼婦のように股を開く女性の姿は、若者にとって妖艶で魅力的だった。 「さぁどうするかね・・・?何せ、こんな婆相手じゃ。無理にとは言わんぞ?」 だが、そんな言葉に反して、若者も躊躇なく服を脱ぐ。そしてその下半身の答えは一つだった。 それを見た女性はうっとりとした表情で 「やれやれ・・・こんな老婆相手に猛りおって。嬉しいのう・・・儂も本当に久しぶりじゃ。存分に楽しませておくれ」 若者は、花の密に誘われる虫のように女性の元へ寄り添い、老婆とは思えない肌や乳房を全身で弄るかのように味わう。 そしてその身体に何回も果てた。 「ふふふ・・・狼とて、飼い慣らせばただの犬よ・・・可愛いのう」 女性の豊かな乳房に、我を忘れてむしゃぶりつく若者の頭を撫でながら、そして女性は耳元で妖しく囁く。 「この誰も近づかん迷いの森の中、ワシら二人っきりじゃ・・・たっぷり楽しもうぞ。 それに、もしお主さえ良ければ・・・ずっとここに居ても良いのじゃぞ?それに、あの子もおるしな・・・」 この女性(ひと)は、錬金術師なんかじゃない。魔女だ・・・と、若者は止め処無い快楽の中で思った。 ・ ・ ここは迷いの森。迷ったが最後、誰も出る事は出来ない・・・ 【完?】