螺旋する花々に揺蕩(たゆた)う我が求愛――痩せ身の誓約に滲む形而上の笑劇

13

2025年03月10日 17時20分
使用モデル名:CustomModel(その他)
対象年齢:全年齢
スタイル:リアル
参加お題:

異世界に転生して早三か月。元リーマンの俺は、今日も森の奥深くをさまよいながら、息を切らしていた。何しろこの世界はやけに食べ物が豊富で、俺は毎日カロリー爆発の三食を腹の底まで詰め込んでいる。結果として、体形はいつのまにかなんだか丸っこくなってしまったらしい。気にしているが、食欲には勝てない。それがいけないと分かっていても、ついつい屋台の肉串に手を伸ばしてしまうのだ。 そんな俺が、どうして密林の半ばまでやって来たのか。理由は単純、エルフの女性に想いを届けようと思ったからだ。名をリィアと言って、長く美しい銀髪と尖った耳がとにかく魅力的。森の中の小さな集落で暮らす彼女を見かけた瞬間、胸がドキンと高鳴り、俺は一瞬にして恋に落ちたのだ。 「よーし、今日こそはこの花束を渡して、俺の熱いハートを伝えるんだ!」 腕いっぱいに抱えた花束は、森で見つけた鮮やかな紫色の花がメインだ。花言葉とかは全く知らない。しかし気持ちさえ伝われば、きっと世界はバラ色に染まる…はず。そう信じて、ずんずん進む。葉っぱを踏みしめるたびに体が揺れて、「あと五キロは走れないな…」と息切れしながら、思わず腹をさする。こんな自分でも、気合いだけは人一倍だ。 やがて、小川のせせらぎが聞こえたところで、俺はついにリィアを見つけた。清らかな水辺で静かに読書をしているらしい。光を浴びた銀髪は、まるで星屑がきらめくみたいに美しい。こんな幻想的な場面、まさに人生のクライマックスだ! 「リィア! これ、受け取ってくれないか?」 「……あなたは、たしか前にも会いましたね。なぜここに?」 彼女が振り向いたその瞳は、冷静ながらも美しいエメラルド色。まっすぐ見つめられて、心拍数は急上昇。俺は興奮しすぎて、花束を渡す前に勢いよく口を開いた。 「実は、ずっとあなたのことが頭から離れなくって…! 飯を食うときも、寝るときも、仕事を…いや、仕事は転生前に終わったんだけど、まぁとにかくずっと考えていた。だから、これ! 俺の想い、受け取ってくれ!」 「な、何を…? きれいな花束だけど…」 リィアが花束を受け取ろうと手を伸ばす。その優雅な仕草を見た瞬間、俺はノリノリでさらに言葉を続ける。 「エルフは酪農だよ。恋と一緒だな!」 「…えっと、どういう意味ですか?」 「あ、ごめん! つい俺の癖が出ちゃって…。深い意味はないんだけど、要するに好きだってことだ!」 ずれまくったままの告白に、リィアの顔が曇った。困ったように口を開こうとする彼女の前で、俺はぷにっとしたお腹を持て余している。すると彼女は呆れたようにひと言、バッサリ。 「……痩せてから来い」 そしてなんと、俺の腹を見てため息をついた瞬間、思いきり足払いを食らわされた。『どすん!』と地面に尻もちをつく俺。その衝撃で花びらが舞い、一人で悲しいドルチェのような雰囲気を醸し出してしまう。 「い、痛いけど…な、なんで蹴ったの…?」 「あなた、私に好意を伝えるわりには、その体形からして自制心がなさすぎるでしょう? エルフは自然と共にある種族です。心身の調和が大切なんです。あなたが変わる気がないなら、まだ受け取るわけにはいきません」 並々ならぬ説得力に、俺は言葉もない。そうか、ただ花束を渡しただけじゃだめなのか。エルフって、意外に厳しいんだな。だが、諦めるわけにはいかなかった。というか、目の前には一番大事なチャンスが転がっているのだ。 「な、なんなら明日から走るよ! たっぷり運動して、あんまり食べないで…」 「どうせ今夜は肉祭りか何かに参加するんでしょう? あまり期待はしません」 リィアの冷たい目線は、ハートにじわじわ突き刺さる。俺はなんとか体を起こし、花束を再び差し出して懲りずに告白する。 「いや、もう肉祭りはやめるよ。代わりに野菜を多めに摂って、ちゃんとジャギング――じゃなくてジョギング? まぁ走ることもするって決めたんだ。俺の本気、信じてほしい!」 「そうは言っても、どうせ長続きしないでしょう?」 「冗談、顔だけにしろよ」 思わずツッコミを入れられた俺に、リィアは少し顔をしかめたものの、わずかに口元がほころぶ。そしてゆっくりと花束に視線を落とした。 「……花は素敵です。あなたにも、もう少し素敵になってほしいんです」 「それって、脈アリってこと…?」 「いいえ。ただの私の期待です」 ああ、なんだかんだ言われても俺はちょっと嬉しいのかもしれない。この世界に転生してから、初めてこんなに情熱を注げる何かを見つけた気がする。倒れそうなほど全力で働くのは本来苦手だけど、彼女のためなら食生活改善だって頑張れるかもしれない。 そんな風に決意を新たにしていたら、彼女は少し恥ずかしそうに花束を受け取り、ひと言だけ付け加えてくれた。 「……もしもあなたが少しでも変わるなら、改めてここに来てください。今度は蹴らずに話を聞きましょう」 「よし、覚悟した! 俺、明日から頑張って走る…走る…うう、今日はもう息切れだけどな…」 こんな風に、一見かみ合わない会話をしながらも、俺とリィアの縁はゆっくりと育まれつつある。彼女の態度は冷たくて、俺は容赦なく蹴り飛ばされる。でもその奥には、確かに小さな優しさがあるんだ。そう信じて、俺は森を出て前向きにダイエットへ向かう心づもりを固めた。 地味にお尻をさすりながら、いつか彼女と笑い合える日が来るように、とにかく体を絞るしかない。明日は朝から走ろう。いや、走るだけでも大変そうだが…ここで逃げてちゃ、あの笑顔に辿り着けない。だって俺は今、他の何よりも大切なものを見つけたんだから。食欲を抑えるのは至難かもしれないけど、すべてはリィアのために。俺は立ち上がる。 そうして決めた同日の夜、結局屋台をうろついてしまった俺がいるが、それはまた別のお話だ。 まだ青黒さを湛えた空にぽつりぽつりと残る星々は、遥かな宇宙の鼓動を奏でるように微かに瞬きながら、東の空に微光を灯しています。優しい風が森の木々を撫で、曖昧なシルエットを淡く映し出す頃、地平の向こうでは新たな誓いを抱いた旅人が、一歩を踏み出す準備を整えるのです。慎ましさとほのかな熱意を胸に、彼は再び花束を携え、いつか届くと信じながら走り出すのでしょう。限りない空の広がりとともに、物語はその暗闇を溶かすように深く、しかし確実に動き始めているのです。いつの日か、約束の地に立つ己の姿を夢見て。彼の行く道はまだ長く、陸地を渡り、風を越えて続きます。どうか皆様、そんな旅の続きを想い描きながら、この安らかな宵をお楽しみくださいませ。

コメント (3)

Jutaro009
2025/03/11 14:00
にしの
2025/03/11 02:20
ガボドゲ
2025/03/11 01:43

182

フォロワー

854

投稿

いいねコメントありがとうございます。忙しくなって活動を縮小しています。返せなかったらすみません。

おすすめ