崩れゆく部屋の中で
薄暗い部屋の中、彼女は古びた台の上に座り込んでいた。壁のタイルは年月とともに剥がれ落ち、元の色を失い、無数の汚れやひび割れがこの場所の荒廃を示している。壁に貼られたポスターは色褪せ、何度も上書きされては剥がされ、その文字もほとんど読めない。「咲舞」「再生」など、断片的な言葉が目に映るが、それが何を意味するのか、彼女にはわからない。 彼女の名前はリナ。この場所に来てどのくらい経ったのかはもう覚えていない。日々の感覚は曖昧になり、ただ流れる時間が彼女の心に重くのしかかっていた。スクール水着を着たまま、冷たいタイルの上に座り込むリナの表情には、どこか疲れたような色が見える。 この場所は、静かすぎる。外からの音はほとんど聞こえず、ただ天井の蛍光灯がちらつく音が薄暗い空間に響いているだけだ。時折、その光が揺らぐたびに、リナは自分の心の中も同じように揺れ動いているように感じた。ここで何を待つべきなのか、自分がなぜこんな場所にいるのか、答えは何もない。ただ、目の前に広がる崩れゆく壁が現実を突きつける。 台の縁には水が染み込み、そこから滴り落ちる水が床に小さな水たまりを作っている。その水たまりに映る自分の姿は、かつての自分とは違って見えた。あの頃の自分はもっと笑っていて、未来に期待していたはずだった。しかし今は、その希望はどこにも見当たらない。 リナは壁のポスターに目を向けた。その文字の中に、何か自分を救うヒントが隠されているのではないかと、何度も探してみた。しかし、そこにあるのはただの意味を失った紙切れと、剥がれ落ちたタイルの跡だけだった。この部屋の中で、何も変わらないまま時間が過ぎていくことが、彼女にとって一番の恐怖だった。 「ここから出たい」その言葉を心の中で何度も繰り返しながら、リナは膝を抱えて小さくなった。自分を守る術もなく、ただこの空間に閉じ込められている現実が、彼女の心を徐々に蝕んでいった。涙が頬を伝い、床の水たまりにぽつりと落ちる。その涙の波紋が、まるで彼女の存在がかき消されていくかのように広がっては消えていく。 リナの目に一瞬、蛍光灯の光が強く差し込んだ。その光はまるで、彼女にまだ希望があることを示唆しているかのように見えたが、それはすぐにまたちらつき、部屋は再び薄暗さを取り戻した。彼女はその一瞬の光にすがりつこうとしたが、それはまるで幻のように消え去った。 この場所で、彼女ができることはただ待つことだけ。希望の光が再び訪れるのを待ちながら、リナは心の中で小さな声をあげ続けた。「誰か、私を見つけて…」しかし、その声は誰にも届かず、薄暗い空間に吸い込まれていくだけだった。 彼女の周囲には何も変わらない現実が広がり、ただ自分自身の心と向き合う時間だけが続いていく。台に座り込んだままのリナの姿は、まるでこの場所の一部となってしまったかのように見えた。冷たく崩れゆく壁と共に、彼女の心もまた、少しずつ壊れていくようだった。