いいね 23
湖を望む夏座敷/スマホ壁紙アーカイブ
【湖を望む夏座敷】 客用の湯呑みを二つ出してから、 今日は誰も来ないのだったと思い出した。 ひとつを棚へ戻し、 彼女は団扇を手に縁側へ出た。 朝顔の蔓が、 昨日より少し高いところまで伸びている。 湖を渡ってきた風に、 風鈴の短冊がゆっくり裏返った。 去年ここで聞いた話の続きは、 手紙にも書かれていなかった。 団扇を止めると、 庭の水音が近くなる。 遠くに小舟が一艘見えた。 誰の舟か確かめるには、 まだ遠すぎた。 やがて背後で母が、 お茶はひとつでいいのかと尋ねた。 彼女は湖を見たまま、 少し考えてから首を振った。

