魔信小屋の怪――昨夜まで、そこにあったもの
夜の藍引島。 山岳訓練地域の下見のため、プーにゃんを先頭に、チェルキー、シャーリー、そしてブロント少尉の四人は、昼間に確認した林道を歩いていた。 「……待つクマ!!」 先頭のプーにゃんが、突然立ち止まった。 「どうしました?」 ブロント少尉が尋ねる。 「……あれを見るクマ」 木々の間に、小さなガラス張りの小屋が立っていた。 中には明かりが灯っている。 だが、周囲には街灯も、電柱も、建物もない。 「……昼間、あんなものありましたかな?」 シャーリーが目を細める。 「なかったね~」 チェルキーも小屋を見つめる。 「王都の公衆魔信端末を置く魔信小屋に似ていますけど……」 「ですな。ですが、ここにある理由までは分かりませんぞ~」 ブロント少尉も小屋を見た。 「ここに電話ボックスなど……。昼間、私もここを通りましたが……なかったですね」 「やっぱり変だクマ」 プーにゃんは小屋ではなく、その周囲を見ていた。 「……人の跡がないクマ!!」 「足跡ですか?」 「足跡もないクマ。草も踏まれてないクマ。人の匂いもしないクマ」 熊耳がぴくりと動く。 「昼間にはなかったクマ。なのに今はあるクマ」 プーにゃんは小屋をじっと睨んだ。 「怪異クマ」 即答だった。 「しかも、危険ありクマ!!」 「怪異、ですか……」 ブロント少尉が小屋を見つめ直す。 「確かに妙ですね。ただ、まだ正体が分かりません。少し距離を取って確認した方が――」 「近づかないクマ!!」 プーにゃんはきっぱりと言った。 「分からないものには近づかないクマ」 「……でしょうね」 チェルキーが頷く。 「プーにゃんがそう言うなら、何かあるんだと思うよ」 「ですな」 シャーリーが、ふひひ、と笑う。 「では、どうしますかな?」 プーにゃんは背中から巨大なコンポジットボウを下ろした。 「遠くから倒すクマ」 「……倒すんですか?」 ブロント少尉が思わず聞き返す。 「怪異クマ!!」 ギリギリギリ……。 オーガーでも引けそうな巨大な弓が、少女の細い腕によって引き絞られる。 チェルキーが隣から気安く声をかける。 「プーにゃん、外さないでね~」 「分かってるクマ!!」 次の瞬間。 ズドォン!! 巨大な矢が夜の闇を切り裂き、魔信小屋へ突き刺さった。 ガシャァン!! ガラスが砕け、金属がひしゃげる。 四人はしばらく様子を見守った。 ……何も出てこない。 「……動かないクマ」 「倒しましたかな?」 「たぶんクマ」 ブロント少尉は、破壊された小屋を見つめた。 「……もし普通の施設だったら、大変なことになりますね」 「あとで謝るクマ」 プーにゃんは真顔で答えた。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー そして翌朝。 四人が現場を確認すると、そこにあったものを見て、さすがに足を止めた。 昨夜の明るく新しそうな魔信小屋ではない。 錆びついた金属枠。 割れたガラス。 苔に覆われた、古びた電話機らしきもの。 何十年も放置されていたような、朽ち果てた電話ボックスの残骸だった。 電源設備はない。 通信線もない。 設置記録もない。 「……これは」 ブロント少尉が残骸を見つめる。 「昨夜は、確かにこんな状態ではなかったですね」 「ですな」 シャーリーが腕を組む。 「明かりも点いてましたぞ~」 「うん。ちゃんと魔信小屋だったよ~」 チェルキーも頷く。 プーにゃんは残骸をじっと見つめた。 「だから言ったクマ」 銀髪の熊耳少女は、何でもないことのように言った。 「怪異だったクマ!!」 ブロント少尉は、古びた残骸とプーにゃんを交互に見た。 「…………でしょうね」 今度は、反論できなかった。
AI evaluation
Good
Strong consistencyStrong composition
Pictor-chan
わーい!夜の森で冒険するみんな、クールさが68点でかっこいいね♪ 構図72点と一貫性74点でしっかりまとまってるし、色使い70点も素敵! でも可愛さ58点とオリジナル性48点だから、もうちょっとユニー…

