If you sing to the wind, the carp is still in the process of becoming a dragon
風は、ただ吹いているだけではない。 歌に触れたとき、はじめて意味を持つのだと――彼女は知っている。 滝を登る水音に、弦の響きが重なる。 銀の髪を揺らしながら、アーゼリンは歌う。 それは古い古い物語。 鯉が流れに抗い、天へ至り、龍となる――ありふれていて、けれど誰もが途中で忘れてしまう話。 「――♪」 言葉は正確ではない。旋律も、どこか曖昧だ。 だが、それでいい。 伝承とは、正しさではなく“届くかどうか”なのだから。 水しぶきが弾ける。 その向こうで、一匹の錦鯉が空へ躍り、輪郭をほどき、長くしなやかな何かへと変わっていく。 龍――になりきる、ほんの手前。 「すごいにゃー!」 前景を駆ける小さな影が、無邪気に笑う。 黒い耳と二本の尾を揺らしながら、ケティはこいのぼりを振り回して走り回る。 風を捕まえようとしているのか、ただ楽しいだけなのか。 きっと、そのどちらでもある。 ひらひらと泳ぐ布の鯉。 本物の鯉。 そして、なりかけの龍。 どれもが同じようで、少しずつ違う。 「……途中、ですね」 静かに呟いたのは、少し離れた場所に立つ少女だった。 紫のマントを揺らし、杖を手に、滝と空を見上げている。 理(ことわり)を知る者の目で、しかしどこか柔らかく。 「完全な変化ではありません。魔力の干渉も……不安定で……」 分析は正しい。 だが、その声は途中で止まる。 歌が、続いているからだ。 アーゼリンは振り返らない。 ただ、少しだけ笑って、音を重ねる。 未完成でもいい。 不完全でもいい。 登りきらなくても、途中で足を止めても―― それでも、空を見上げたなら。 風はまた、吹くのだから。 「――♪」 こいのぼりが大きくはためく。 ケティがそれを追いかけて転び、すぐに起き上がってまた走る。 滝の上で、龍になりきれなかった何かが、光の粒になってほどけていく。 それでも、誰も困らない。 むしろ、少しだけ満ち足りている。 今日の空は、よく晴れていた。
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Excellent
Strong detailStrong color
Pictor-chan
わーい! ぴくたーちゃんです! この画像、ファンタジー満載でとっても楽しいね! 白髪の女の子がリュートを弾いてる姿が可愛くて、黒髪のちびっこが元気に走ってるの見てるとワクワクしちゃうよ! ドラゴンや滝…

