thumbnail

1 / 3

ぬいぐるみ教官、捕獲不能(そして開封)

賢者の学院・外演習場。 石畳の広場に、異様な緊張が満ちていた。 「本日の特別実習。対・制圧困難対象」 教官の一言で、スカウト候補生たちが構える。 男子はスラックス、女子はミニプリーツスカート。赤い短マントが揃って揺れる。 その視線の先に―― いた。 ふわふわの毛並み。 丸い体。 つぶらな瞳。 「……クマ?」 誰かが呟く。 だが、担当教官は淡々と告げた。 「外部教官、プーにゃんだ」 沈黙。 「よろしクマー」 場違いなほど、のんびりした声。 ――そして。 「開始!」 「行けぇッ!!」 一斉に飛びかかる候補生たち。 腕に二人。 脚に三人。 背中に数人。 完璧な包囲。 「捕まえた!」 その瞬間―― 「軽いクマ」 全員が浮いた。 「なっ!?」 そのまま、ばらばらに転がされる。 投げでも技でもない。 ただの“力”。 二度目。三度目。 数を増やし、連携を組み、死角から攻める。 だが結果は同じだった。 「止めろ!足を固めろ!」 「今度こそ――!」 クマが、ほんの少し前に歩く。 それだけで。 全員が引きずられる。 「うそでしょ!?」 石畳に擦れる音。 必死にしがみつく手。 だが、止まらない。 「もうちょっと頑張るクマ」 優しい声で、地獄を更新する。 「……無理だな」 離れた位置で、リリスが呟く。 「勝ち目、ゼロ」 「いいねぇ」 ダキニラが笑いながらシャッターを切る。 「この“絶対勝てない感じ”、売れるよ」 「まだだぁッ!!」 最後の突撃。 全員で一斉に組みつく。 完全拘束。 今度こそ、止まった。 「……お?」 わずかな静止。 希望がよぎる。 そのとき―― ぐらり クマの頭が、揺れた。 「……え?」 最初に気づいたのは、至近距離の男子だった。 「ちょ、待っ――」 もう一度。 ぐらり、と大きくズレる。 「……あ」 ぽこん。 あまりにも軽い音だった。 クマの頭が、外れた。 その下から現れたのは―― 銀色の髪。 小柄な顔立ち。 そして―― ぴこりと揺れる、クマ耳。 「……あー、ちょっとズレたクマ」 中から現れた少女は、けろりと言った。 着ぐるみの首元から顔を出したまま、周囲を見回す。 全員、停止。 思考停止。 「え?」 「……え?」 「……は?」 誰も動けない。 世界が、一拍遅れて理解する。 (中に人がいる) だが。 次の瞬間、その認識は即座に否定された。 「じゃ、続きやるクマ?」 少女――プーにゃんが、にこりと笑う。 そのまま。 頭が外れたまま。 全員を引きずって、また歩き出した。 「うわあああああああ!?」 「待って待って待って!!」 「中身出てるのに強さ変わってない!?」 むしろ。 バランスが良くなっている。 「すずしくて見やすくて動きやすいクマ」 にこやかに言いながら。 一人、また一人と、軽々と転がしていく。 「規格外すぎるでしょ!!」 シャーリーがにやつく。 「いやむしろ強くなってるでござるな!」 リリスが額を押さえる。 「……意味が分からない」 ダキニラは爆笑していた。 「最高だよこれ。“ぬいぐるみの中身が出たらもっと強い”とか何それ」 「はい、そこまで」 教官の声。 全員、地面に転がったまま終了。 プーにゃんは、外したクマの頭を片手で持ち上げる。 そして、ひょいと被り直した。 「楽しかったクマ」 誰も、立ち上がれない。 肉体ではなく―― 常識が折れていた。 その様子を、学院長は遠くから眺めていた。 「うむ」 満足げに頷く。 「引き締まったな」 その評価に、誰一人として異議を唱える余力はなかった。

Pictor-chan
Pictor-chan

わーい! ぴくたーちゃんです♪ この画像、魔法学校みたいなところでみんなで大きなクマさんを運んでるシーンだね! クマさんのふわふわした可愛い表情と、子供たちの元気いっぱいな顔がとってもチャーミング!

2
2
3
17
5
21
2
22
20
2
20
18
19
8
21
4
20
23
3
18
3
25
2
24
3
27
2
21

Comments (...)

Loading comments

934

Followers

1166

Posts

Recommended