蒼穹のフロンティア【鋼の呼吸 ― 交差する静と余裕】
Rin
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第7機動艦隊テンペスト、トレーニングルーム。 戦場の喧騒とは無縁のその場所で、ただ鉄の音だけが規則的に響いていた。 ダンベルを持ち上げるアリシア・ヴァレンタイン。 その動きは無駄がなく、静かで、そしてどこか張り詰めている。 ――戦場の記憶が、まだ抜けていない。 そんな彼女の背後から、軽い声が飛ぶ。 「おいおい、そんな顔で鍛えてたら 筋肉まで真面目になっちまうぜ?」 振り向かずとも分かる声。 ロレンツォ・バルディーニ。 いつものように、余裕の笑みを浮かべながら、同じようにダンベルを持ち上げていた。 「……あなたは、いつも余裕ね」 短く返すアリシア。 だがその声には、わずかな安堵が混じっている。 ロレンツォは肩をすくめる。 「余裕に見せてるだけさ。本気で焦ったら――終わりだからな」 その一言に、空気が変わる。 ヴォイドのエース、グロフィス・ラングレー。 “インサイト”によって先を読む存在。 あの戦場で感じた“見透かされる感覚”は、アリシアの中に深く残っていた。 だが―― 「……それでも、私は前に出る」 ダンベルを握る手に、力がこもる。 「知ってるさ」 ロレンツォは笑う。 「だから俺が後ろから支える。 無茶しすぎたら、ちゃんと止めてやるよ」 軽口のようでいて、確かな言葉。 それは“鋼鉄の三角陣”を支える一角としての、揺るがない覚悟だった。 静かに鍛えるアリシア。 笑いながら鍛えるロレンツォ。 対照的な二人の呼吸が、同じリズムで重なっていく。 それは戦場に戻るための準備。 そして―― 次の戦いでも、生き残るための約束だった。

