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潜入偵察ですぞ ~丁か半か、零か~
王都旧城壁の内側に、東方文化保存自治区リトルショーグンがある。 かつて異邦から来た武士たちが砦を築き、王都を救った。その功績によって自治を認められ、数百年。 瓦屋根の商家や古い門が並ぶ一方、王都式の魔導街灯も灯る。古い文化と新しい技術が共存する街である。 「ふむ……今回は賭場の実態を調査しますかな」 前回の潜入偵察では、忍者装束が目立ちすぎるとリリスに叱られた。 そこでシャーリーは考えた。 東方文化を理解するには、まず東方文化を身にまとうべし。 そして現在。 赤と金の本格的な和服に身を包んだシャーリーは、賭場の卓で堂々と壺を振っていた。 「さあ、張った張った! 半か丁か!!」 「半!!」 「丁!!」 客たちの声が飛び交う。 シャーリーはニヤリと笑い、ゆっくりと壺を持ち上げた。 そこにあったのは―― 賽子ではなく、一枚の紙。 紙には、妙にかわいらしくデフォルメされたシャーリー自身の姿が、錦絵風に描かれていた。 「ふひひひひ、そのどちらでもありませぬ」 シャーリーは胸を張る。 「零では割れませぬぞ~」 「…………」 客も胴元も沈黙した。 やがて、誰かが尋ねた。 「……賽子は?」 「ありませんな」 「勝負は?」 「未定義ですぞ」 「…………」 シャーリーは腕を組み、深くうなずいた。 「むむ、拙尼がいかさまを働いたとでもいうのですかな」 そして、卓をバンと叩いた。 「よろしかろう!! この身にやましきことなど何一つありませんぞ!! さあ、存分にお調べなられると良い!!」 ババーン!! 白い半袖体操着に紺色のブルマ姿のシャーリーが、堂々と胸を張っていた。 「…………」 「…………」 賭場の全員が、固まった。 シャーリーだけが、実に誇らしげだった。 やがて、屈強な用心棒が二人、無言で左右から彼女の両腕をつかんだ。 「……姐さん、お帰りはこちらです」 「おや? まだ調査の途中ですぞ?」 返事はなかった。 そのまま、すたすたと出口へ。 そして、ぽいっ。 賭場の外に放り出されたシャーリーは、しばらく呆然としていた。 「……ふひひ」 やがて立ち上がり、体操着の裾を整える。 「非常に礼儀正しい……。見事に統制されていますな」 閉じられていく賭場の扉を眺めながら、シャーリーはひとりうなずいた。 「区域外のギルドとは一味違う。揉め事の処理も迅速、余計な騒ぎも起こさない……」 どうやら、必要なところはしっかり見ていたらしい。 「ふむ。これぞ潜入偵察の成果ですな」 そして、満足げに胸を張った。 「潜入偵察、完了ですぞ!」
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それは 様々な種族が 対立と 共存を繰り返す 世界の物語

