thumbnailthumbnail-0thumbnail-1thumbnail-2

1 / 3

異世界節分・福豆騒動

屋根の上で、影がくるりと回った。 「ふひひ……拙尼こそ鬼、天邪鬼。すなわち天から遣わされた鬼ですぞ~?」  瓦の縁に腰掛け、赤い豆をひょいと空中で受け止めながら、シャーリーは楽しげに笑った。  投げつけられた豆は、彼女の指の間で軽やかに踊り、そのまま口へ運ばれる。 「ぽりぽり……うむ、今年の豆は出来がよいですなぁ」  子供たちは歓声を上げ、調子に乗って次々と豆を投げる。  だが一つ、軌道を外れた豆が――  こん、と鈍い音を立てて止まった。  それは屋根ではなく、地上に立つ一人の女戦士の肩に当たっていた。  長身。  人の肌と変わらぬ色合いの肌。  動きやすさを重視した人間風の服の上に、実用的な鎧。  戦神の紋を刻んだマントが夜風に揺れ、腰には鞘に収まったショートソード。  グレドーラは、ゆっくりと振り返った。 「……?」  その鋭い眼光に、子供たちは一斉に凍りつく。  豆を握った手が止まり、足がすくみ、声も出ない。 (やっ、やば……!)  次の瞬間―― 「おおっとぉ!?」  屋根の上から、わざとらしい声が落ちてきた。 「今のは拙尼ですぞ! いやはや、力加減を誤りましたな~!」  シャーリーは屋根の縁から身を乗り出し、肩をすくめて大仰に笑う。 「鬼がうっかり豆を投げ返してしまうとは、これは失態失態。全部この鬼の仕業、悪いのは拙尼ですぞ~?」  子供たちは、きょとんとしたままシャーリーを見る。  そして、もう一度グレドーラを恐る恐る見上げる。  グレドーラは一瞬、黙っていたが――  やがて、小さく息を吐き、肩に当たった豆を指でつまみ取った。 「……なるほど」  表情は険しいままだが、声は低く穏やかだった。 「元気な子供たちだ。祭りの夜らしい」  子供たちが、恐る恐る顔を上げる。 「戦場では、これくらいの不意打ちは珍しくない」  そう言って、わずかに口元を緩める。 「気にするな」  その言葉に、張り詰めていた空気がほどけた。 「ふひひ……さすがグレドーラ殿。戦神の器は伊達ではありませんなぁ」  シャーリーは屋根の上で、満足そうに尻尾――もとい、体を揺らす。 「では拙尼、悪役としてもう少し豆を受け止めてきますぞ~!」  再び飛び交う豆。  夜の笑い声。  戦神のマントは静かに揺れ、鬼役の影は屋根の上で踊っていた。  ――誰も傷つかず、誰かが一つ、悪役を引き受けただけの夜だった。

ぴくたーちゃん
ぴくたーちゃん

わーい! ぴくたーちゃんだよ♪ この画像、黒髪の女の子が鬼の角つけて金貨をばらまいてる姿が超かわいいね! 雪の街並みと夕焼けみたいな空がロマンチックで、赤いマントがアクセントになってかっこいいよ。細か

さかいきしお
20
18
3
28
3
28
4
21
2
29
7
24
19
5
30
19
32
30
3
22
3
29
5
23
2
23

コメント (19)

2026/01/17 03:30
2026/01/14 09:33
2026/01/14 09:12
2026/01/14 02:23
2026/01/13 23:34
2026/01/13 22:18
2026/01/13 20:27

927

フォロワー

1227

投稿

おすすめ