thumbnail

1 / 4

いいね 43

王都初売り・チェルキーの福袋

王都の冬は、思ったよりも騒がしい。  初売りの立つ通りには人の声が溢れ、香辛料と焼き菓子の匂いが入り混じって、冷たい空気さえどこか柔らいでいた。 「はいはい、福袋ですよー。旅に出る人も、戻ってきた人も、どっちにも役に立つやつです」  声の主は、小柄な少女――いや、見た目こそ少女だが、纏う雰囲気はしっかりとした大人のそれだった。  緑髪を高く束ね、白と緑を基調にした巫女服。料理人の服を神殿仕様に仕立て直したような装いに、美食の女神の聖印が控えめに光っている。  彼女の前に並ぶのは、麻袋でできた福袋。片手で持てる大きさだが、持ち上げた客が思わず「おっ」と声を漏らす程度には重い。 「中身? 難しいものは入ってませんよ」  チェルキーはそう言って、袋の口を少し開いた。  紙に包まれた乾パン、布袋に入ったナッツと豆菓子、味付け干し肉。  新聞紙にくるまれた小鍋と、簡易ストーブ。小瓶に分けられた調味料も、がちゃがちゃ音を立てて顔を覗かせる。 「火と水があれば、あとはこれでどうにかなります。あ、甘いものも少し入ってますから」  そう言って、屋台の脇で実演を始める。  鍋に湯を張り、袋から取り出した主菜を温めるだけ。特別な魔法も技巧もない。  それでも立ち上る湯気と香りに、通りすがりの冒険者たちが足を止めた。 「旅先で、ちゃんと食べるのって大事ですから」  真剣な横顔でそう言ったあと、こちらに気づいてにこりと笑う。  大きな瞳が細まり、その笑顔だけで場の空気が和らいだ。  やがて売り子の時間がひと段落し、彼女は麻袋を片手に立ち上がる。  腰には大ぶりな牛刀。冒険者の装備も、料理人の道具も、すべてが自然に馴染んでいる。  それは福袋という形を借りた、彼女なりの祈りだった。  無事に食べ、無事に帰れ、と。  王都の初売り。  今日もまた、誰かの旅支度が、ここから始まっていく。

ぴくたーちゃん
ぴくたーちゃん

わーい!この画像、緑髪のエルフちゃんが袋を持ってにこにこ笑ってるの、すっごくかわいいよぉ!背景の街並みもファンタジーっぽくてワクワクしちゃうね。表情が生き生きしてて、細かいところまで丁寧に描かれてるけ

シリーズ
モンスターイーター

彼女はすべてを倒す 彼女はすべてを頬る 彼女はすべてを貪り食う 彼女はなんだ 彼女は冒険者だ

東方三千年の叡智――食人小鬼とタケノコ結界
5
6
最強の冒険者ぷーにゃんさん!
3
21
農場の新入り? 巨大カボチャは王都へ行け!
21
学院のパスタ講座――それはチネリめしではありません!
2
25
ロック鳥騒動――水難解決、学院に新たな災難
2
22
化学の授業では教えません
6
15
神罰、そして真聖女の爆誕
14
助かったニャ!……って、何そのヘリ!?
13
一人旅、出発前に終了
2
13
頭髪武装! 学生戦士バルサム
2
18
パパの読み聞かせ
20
メイドは歩け、生徒は飛ぶな?
5
15
美食巫女、歌い手デビュー!? 驚異の声量、壊滅的な音程!
2
20
ボス
2
16
月見茸は裏路地にあり
19
シルエット作戦――あと一人足りない!
4
22

コメント (...)

コメントを読み込み中

947

フォロワー

1190

投稿

おすすめ