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秘密のベレー帽

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2025年08月26日 14時55分
対象年齢:全年齢
スタイル:イラスト
デイリー入賞 169
参加お題:

紫峰怜花は、ずっと気になっていた。 狭霧華蓮がいつも頭にのせている、あのベレー帽。授業中も、帰り道も、文化祭の準備中でさえ外さない。 ある日の放課後、勇気を出して聞いてみる。 「ねえ華蓮さん、そのベレー帽……どうしていつもかぶってるの?」 すると彼女は、ほんの少しだけ考える素振りをしてから、淡々と答えた。 「秘密です」 怜花は苦笑する。 「それ、秘密って言えば済む便利な答え方でしょ」 「便利であり、かつ有効です」 すました顔で言う華蓮に、怜花は吹き出してしまう。 しかし、数日後。図書室でふたりきりになったとき、華蓮は不意に声を落とした。 「先生。少しだけ、秘密を共有してもいいですか」 「えっ、なに?」 怜花が目を瞬かせると、華蓮はゆっくりベレー帽を外した。そこには、小さな布の内ポケットが縫い付けられていて――中には折りたたんだ短いメモ用紙が何枚も入っていた。 「……これ、何?」 「考えごとをしたときに浮かんだ言葉を、すぐに書いてしまうのです。忘れないように。だから、この帽子は、私の小さな“思考の隠れ家”」 怜花はしばらく黙って見つめ、やがて柔らかく笑った。 「なるほどね。だから、いつもかぶってたんだ」 「秘密にしていたのは……少し照れくさかったからです」 帽子を抱える華蓮の横顔は、いつもよりほんのり赤い。 怜花は胸の奥がじんわり温かくなるのを感じて、小さく頷いた。 「ありがとう、打ち明けてくれて。秘密って、ひとりで抱えるより誰かと分け合った方が、軽くて楽しいんだよ」 華蓮は少しだけ笑って、そっとベレー帽をかぶり直した。 「では先生、この秘密は……ここだけのものに」 「もちろん。ふたりだけの秘密ね」 窓の外、夕陽に照らされた図書室で、二人の笑い声が静かに重なった。

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