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ひまわり chapter1
ひまわりが咲き誇る田舎道を歩いていると、ふいに見覚えのある背中が視界に入った。 麦わら帽子、肩まで焼けた肌、風になびくショートカット。そして、ひまわり畑の中で笑うその姿。 「……向日葵?」 つい、名前を呼んでいた。 振り向いた少女は、ぱっと花が開くように笑った。 「うわっ、やっぱ○○っちじゃん! ひさしぶりっす~!」 その喋り方、元気な声、そして人懐っこい笑顔。間違いない。瀬颯 向日葵(せはやて ひまわり)――。 子どもの頃、毎年夏に親戚一同がこの村に集まっていた頃、僕とよく遊んでいた“同い年の友達”。でも、向日葵は5年前の夏から急に来なくなり、少しずつ記憶の奥にしまわれていた存在だった。 「なんだよその顔。忘れてた? ひどいな~」 「忘れるわけないだろ。でも……ちょっと、変わったな」 「え? 背、伸びたっすか? それとも、可愛くなったとか?」 「……いや……まあ……そうかな?」 と歯切れの悪い返事をしてしまった。 気づけば、彼女を見る目が昔と変わっていた。 肩にくっきり残る水着の跡、健康的に焼けた肌、動くたびに風になびく軽やかなスカート。 その姿は、子どもの頃の“友達”ではなく、どこか女性らしく、まぶしく見えた。 「水泳部っすよ。バタフライやってて、今年全国出たっす」 「……すごいな。もう、完全に追いつけないな」 「何言ってんすか。○○っちも昔は負けてなかったっすよ。……よく木登り勝負したよね」 向日葵は笑った。懐かしい夏の日々を思い出すように。 あの頃は、元気すぎるただの“友達”だったのに。こうして再び会った向日葵は、僕の記憶のなかの彼女と、まるで重ならない。 風に揺れるスカートの裾も、ひまわり畑のなかで光を反射する肌も、ふとした瞬間のまなざしも ひまわり畑に吹いた風が、彼女の帽子を軽く揺らした。 あの夏の続きが、今ここから始まる。そんな予感がした。
